
第121話「先発させるか? させないか?の巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
近藤モーターズに押しかけた記者たちの前で、息子を先発させたらヤバイと語った近藤父。
墨高がここまで勝ち残れた事を喜び、谷口監督や選手を労い、浪国戦の勝ち方に涙したとしながらも、
「これでベスト8ですよね? 十分満足な結果やが…」
「ここまでくると当然欲が出てくる。もう一個勝ってベスト4」
「谷口監督だってそう思ってるハズです」
と語る。
記者たちはその準々決勝という大舞台で近藤が先発するとこを見たい。
全国の高校野球ファンが見てみたいと思っていると話すが、
「私も息子があんなピッチングをするとは思わなかった」
「甲子園に成長させて貰ったと思っとります」
「ただ、ウチの息子は皆さん達が思っているより未熟者でね。こんな風に持ち上げて貰うことが怖い」
と、近藤父は言う。
煽てられて調子に乗って木に登ると必ず落ちる。
息子はそういうタイプだから、先発だけは回避した方がいいと。
「谷口監督はここまで来たらシビアに物事を考えると思います。息子を使うとしたらリリーフの方がええ」
と。
謙遜しすぎではないかという記者たちだが近藤父は、
「息子の事は私が一番よくわかっとりまっせ」
と返した。
墨谷高校でもベスト8進出の話題と次は近藤が先発だろうという話題でもちっきり。
屋上で新聞見ながら話す生徒達は語る。
「野球はピッチャーなのよ。近藤は明らかに”特別な働き”をしてしまった」
「こーゆーのが出てくるとチームは強いよ」
「ここからずっと近藤を投げさせたら何かが起こるかもしれない」
「過去の甲子園でもこーゆー現象は何度も起こった」
「甲子園に誕生させられたスターがどんどん快進撃を続けてゆく」
のだと。
またテレビのワイドショーでも近藤のピッチングを解説。
まだ1年なので未完成だが、ゆくゆくは縞馬にも迫る素材だとし、
「僕もねー、準々決勝で彼が先発するとこを見てみたいんですけどね~~~」
と話す解説者に司会者が近藤父の先発はやめた方がいいと語っている事を伝えるが、
「それはね、お父さんは謙虚なんでしょうね。他にも上級生のピッチャーがいますからね。ウチの息子を行かせろとは大声では言えない」
のだと分析。
そして墨谷高校の校長室には各方面から集まった寄付を先生が渡しにやって来た。
昨日から今日にかけて校長先生もびっくりするほどの額が集まったらしい。
浪国戦での逆転劇がみんなを感動させ、期待値が高まって、これだけの額が集まったと考えるが、寄付金を持ってきた先生は、
「でもね、それだけだったらここまでじゃないと思うんです。あの近藤というピッチャーの活躍…。ここに何かを感じているのだと思います」
「近藤という男が居る以上……何が起こってもおかしくない…かと」
と、やはり近藤への期待の大きさを口にする。
場所は変わって墨高が練習するグラウンドには大勢の観客が押し寄せており、マスコミのカメラが近藤のピッチング練習を撮影している。
観客からは
「近藤クン明日は先発するの~?」
「絶対先発で見たいよ」
「先発して先発して~~~」
との声も飛ぶ中、その報道陣とギャラリーの多さに近藤もまんざらではない様子。
一方、バッティング練習中の丸井のバットも快音を響かせ、観客からは期待の声が飛ぶが、丸井の表情は浮かない。
(今、世間がおもいっきり持ち上げてくれている。でもヤバイぞ。この雰囲気……)
(浮かれたら絶対良くない事が起こる。世間からの称賛の声は全てシャットアウトするんだ。勝ったら勝ったで兜の緒を思いっきりキツく締めなくちゃ)
と考えていると、前からこの熱気にすっかり浮かれた表情の近藤が歩いてくるのを発見。
「あ」
「おい近藤! おめぇ…何浮かれた顔しとる!」
「チヤホヤされても口角は上げんなバカ!」
と、叱りつける。
「そんな事ゆーてもワイは元々こんな顔ですさかい」
と、言い返す近藤だが、
「いいか! 気を引きしめろよ」
と、再度の注意。
(近藤は本当に頼りになるのか? それともならねえのか? ここまで来たらおれは本気でベスト4まで行ってみてぇ…)
そう考える丸井だった。
谷口の号令で投手陣4人が外野のランニング。
フェンスの向こうからは近藤の名前が飛び交う。
その様子に
「時代は一夜にして変わった。もうおれ達の時代じゃないんだ」
と話す松川と、
「この間まで硬球を怖がっていた1年坊が…」
と話す井口。
「近藤の中学の時からの歴史はおれが一番良く知っています」
そしてイガラシ。
それを聞いた松川は、
「おれ達はお呼びではない」
「な~んてな。いやいやイガラシも井口もまだまだ出番はあるからなー。気を抜くんじゃないぞ。おれも3年としてがんばるからな」
と、みんなを鼓舞する。
取材陣に囲まれた谷口は、明日の先発が近藤なのかと問われ、
「それが正直なとこ……まだ決めていないんです」
とだけ答えてその場を去る。
その回答に記者たちは
「墨谷は珍しいチームだ。絶対的なエースを作っていない」
「4人も投手を持っていて順番性のようなとこがある」
「それで行くと次は井口クンという見方もできるが…」
と話すのだった。
夜。
谷口の部屋に呼ばれた井口は、
「ウチはこれまで4人の投手の分業制でやって来た。ひとりひとりの負担を軽減させるためだ。それで行くと次は井口オマエなんだ。明日はオマエに先発してもらいたい」
と、明日の先発を伝える谷口。
「オマエの肩は休養十分だ」
と話すが井口は、
「監督……」
「ここまで”外圧”に惑わされずがんばって考えてこられたと思います」
「近藤が本当にいいのか考えていたんですよね?」
と、谷口に尋ねる。
「ここに来ておれの性分が出てきた」
「心底勝ちたくなってきた!」
「近藤は昨日の疲れがあるかもしれない。だってあんなに全力で投げたんだ。これはおれなりにベスト4行くために出した答えなんだ」
と話す谷口に井口は、
「普通の監督は試合によって投手を変えたがらない。それはものすごく怖いことだからです」
「一回負けたら終わり――のトーナメント…。エースに頼りきって連投・連投・完投・完投の方が安心。それが浪国の縞馬みたいな事なんでしょうが……」
「谷口さんは心が強い人です。”安心”を取らず皆を信じてるんですから…」
「でも今回ばかりは違うんです。僕はキャッチャーをやらせて貰って初めてわかりました。ひとりの投手が甲子園で覚醒していく時のものすごさ」
「今日のブルペンでのピッチングもすごかった」
「昨日もすごかったが今日はもっとすごかった…」
「近藤の昨日からの覚醒はすごいんです。こんな瞬間にキャッチャーとして立ち会えた」
「そりゃあ何週かのスパンで考えたら調子の波はあるでしょうが……。ここ2~3日のスパンだったら近藤は絶対的に強い」
「僕もここに来て勝ちたくなってきました。近藤先発の方が勝てる可能性が上がるような気がするんです」
と、今の近藤の凄さについて力説。
だが、谷口は、
「明日の相手はセンバツで浪国を破って優勝した御法島高校だぞ」
と話すが、それでも井口は、
「浪国に勝ったという事は次も何が起こるかわからない。僕は御法島相手にだって何かが起こせると思う……。そのための第一歩が近藤…」
なのだと伝える。
そんな井口に谷口もそれ以上は何も言えなかった。
こうして迎えた御法島高校との準々決勝。
「春・夏連覇に向けて着々と進む御法島高校の準々決勝! 相手は奇跡の逆転勝ち! 墨谷高校!」
「お互い公立校! 御法島は古豪! 墨谷は初出場!」
「そして墨谷はこの大一番の先発にやはり近藤クンを立ててきました!」
実況が伝える。
1回表墨谷のマウンドには近藤が立っていた。
大歓声のスタンド。
「”浪人生”谷口監督はベスト4へ向けて勝負をかけてきました! スーパー1年生の近藤クンに託したのです!」
あらためて実況がそう伝え、記者席からも、
「やはり谷口監督は近藤を選んだ!」
「よっしゃあ! 今日は最初から近藤が見れる!」
との声があがる。
それを仕事中聴いていた近藤父は、
(谷口監督……世間の外圧に負けたな…)
(ムスコに懸けてくれたのは死ぬ程嬉しい…)
と、涙するが、
(だがそれじゃ勝てない。谷口監督の若さが出てしまったな)
(見えるよ…。茂一の足は今…甲子園のマウンドから浮き上がっとる)
と、息子の姿を思い浮かべる。
そしてマウンド上には大歓声の中、
(うわ~~~ッ! 甲子園の準々決勝のマウンドにワイが立っちゃった~~~~!)
と、近藤父が危惧する通りの様子の近藤がいた。
ここで第121話が終わります。
谷口監督としては勝つための井口先発だったけど、その井口の説得に圧し負けたって感じでしょうか。
近藤の様子見ると近藤父が心配している通りなのが気になります。
一方で丸井は過去の経験もあってか、浮かれた様子はなく成長を感じさせられました。
次回は、
信じられない実績を持つ御法島!
『球歴が部長クラス』の巻
今回谷口からさらっと出た準々決勝の相手、御法島高校。
センバツで浪国を倒したというその実力、気になります。
・第117話「どんどん前に飛ぶの巻」
・第118話「作戦なんて出来るわけないの巻」
・第119話「今度こその集大成!の巻」
・第120話「日本中の…の巻」
・第121話「先発させるか? させないか?の巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ
・キャプテン2(16)
・キャプテン(1)
・プレイボール2(1)
・プレイボール(1)

