第120話「日本中の…の巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
浪国戦。
9回裏。
カドバンの走塁妨害で近藤のホームインが認められ、墨谷のサヨナラ勝ちとなった。
球審の
「集合!」
の声。
「試合が終わった試合が終わった~~~~~!」
「サヨナラサヨナラサヨナラサヨナラ!」
実況が叫ぶ。
スタンドの観客は
「え~~~? なんなの~~~!?」
「ランナーはベースの前でふっ飛ばされたのに…!?」
と、状況が理解できていない様子。
そして、
「おいおい今のはちゃんとしたブロックやろがーー! アウトやろーー!」
と、声をあげる浪国監督だったが、
「ああ~! あせっちまった!」
「今のは走塁妨害を取られても仕方ない…」
と、カドバンと縞馬は走塁妨害を受け入れている。
そんな2人のがっくしな様子に
「カドとシマの態度…!」
と、浪国監督もそれ以上は何も言えず。
再び球審が選手を集合させる。
そんな中実況者は
「1塁ランナー近藤クンのホーム突入はやや暴走ぎみでした! しかしそれを見た角クンは感情的になってしまった! 何ナメた走塁しとるんやとばかりに…」
「もちろん”サヨナラの場面”ですからあせりもあったでしょう。それが”強いブロック”に行かせてしまった! いや! その前に”サヨナラの場面”がここで訪れるとは……!」
「ここはフォアボールで押し出し…」
「4対3にはなるが試合はまだ続いて行くと………」
「恥ずかしながら私はそんな事を考えていました」
と語り、解説者もまた、
「丸井クンだってフォアを選ぶつもりだったでしょう」
「しかし最後の最後でヒッティング………」
「それがよもやあんな打球になろうとは………」
と語る。
大会10日目第2試合は観客席の誰もがいまだに信じられない超大番狂わせの大逆転劇で幕を閉じた。
墨谷の校歌斉唱が始まる中、浪国監督は深く後悔する。
(し…縞馬を殴ってでもマウンドから引きずり降ろすべきだった! フォアボールは確実――と決め込んでしまった! しかしツースリーからのラストボールはストライクゾーンへ)
(完全に私の甘さだッ! 私は監督失格だッ!)
(縞馬と角を擁したこのチームで優勝できなかったとは…)
試合後。
記者に囲まれる谷口。
「もし同点で延長になった場合近藤クンを行かせるつもりでしたか?」
との質問に、
「2点ビハインドで、しかも近藤は塁上に居ましたからね。正直そんなs界の事は考えられませんでした」
と答え、
「近藤クンのホーム突入はやや無謀にも思えましたが……」
との質問には、
「いや、カウントツースリーでスタートを切ってるんです。あの突っ込みは当然です」
「むしろツースリーにしてしまった縞馬クンに敗因はあったと思います」
「それに……仮にアウトになってしまっても、アレはチーム全体に勇気をもたらしたでしょう。僕は初めてここに来ましたが、甲子園という場所は多分それが怖いんだと思います」
「”甲子園の先輩”角クンはそれをわかっていた。だから我を忘れて激しいプレーをしてしまった」
と語る。
それを聞いた記者たちは、
(これは……もし延長になっても墨谷が勝っていたかもしれない)
(いやいや延長になったら浪国だったよ)
(いやいや一気に攻めたからこそ”サヨナラ”が起こった)
と、それぞれに思うのだった。
同じく記者に囲まれる丸井。
「丸井クン! 縞馬クンからサヨナラヒットを打った感想はー?」
との質問に、
「いや~~~~~~~~~~~~………」
「確かに僕はタイムリーヒットを打ちましたがあくまでも”同点打”です。最後の勝ち越し点はカドバン君の走塁妨害なんで…。僕は厳密にはサヨナラヒットではないのです」
と答える。
そんな丸井に記者たちからは、
「冷静~~~ッ!」
「殊勲打には間違いない!」
「君は一世一代の大仕事をやってのけたんだ!」
「墨谷に丸井あり!」
との声が飛ぶ。
「やめて下さい~! 僕自分の性格を知ってるんです! おだてられて調子に乗るとロクな事がないんで!」
と、丸井は喜びと照れ混じりの表情を浮かべていた。
そしてこちらも記者に囲まれる近藤。
6回途中から打者10人をパーフェクトに抑えた感想を聞かせて欲しいと言われ、
「今日のワイそんなにすごかったでっか?」
と逆に尋ねる。
「すごいなんてもんじゃない! 相手は天下の浪国打線だよ! このメンツでセンバツは準優勝してるんだよ!」
「何より9連続内野フライにみんな驚いているんだ! 君の好投が逆転へとつなげたんだよ!」
「失礼だが1回戦の時はここまでやるとは思わなかった。今日の好投の原因は?」
と絶賛され、さらに質問を受けた近藤は、
「いや~よくわかりまへんけど…。今日は2回めだったんでちょっと甲子園に慣れたのかな~って…」
「とってもとっても投げ易かったんです。みんながワーワーゆってくれとるのが冷静に見れて……」
「もー最高に気持ちいくて…それがこうブワーってパワーをくれたちゅーか…」
と語った。
インタビューも終わって甲子園を出ると、浪国に勝った墨谷を見ようと大勢の人達が待ち受けていた。
係員に守られて歩く中、
「墨谷の監督サン」
と、突然声をかけられた谷口。
そこにいたのは縞馬だった。
「やられましたよ」
と一言。
「す、素晴らしいボールを見せてもらった。君と戦えたことは財産になったよ」
と返す谷口。
「言っときますがおれは丸井に負けたわけじゃない。近藤に負けたわけでもない」
「監督サンに負けたんや」
驚く谷口。
「くやし紛れに言いますよ」
「墨谷にはピリッと光る選手が何人かおりますが……それでもこのメンツで勝ち上がれる事はありえなかった」
「墨谷が強いのは谷口さん……あなたが監督をやっとるからやと思います」
そう話す縞馬に谷口は、
「縞馬クン……おれは何もやってないよ」
と動揺するが縞馬は、
「ふふ…谷口さんがさっき言っとったように…ツースリーにしたのがマズかったかな…?」
と語り、
「谷口さんはベスト8監督になりました。あしたから大変なことになりますよ…。それじゃ失礼します。おっと受験もがんばって下さいよ」
と言い残して去って行った。
東京下町。
墨谷のベスト8進出に各所で大騒ぎ。
集英予備校や小学館予備校も、生徒達から勉強が手につかないから準々決勝の日はスケジュールを変更して欲しいという要望や、甲子園まで応援に行くと言い出している生徒も多数出ている状態。
そんな中、リカとサチ子も小学館予備校の女子2人と喫茶店で墨谷の話をしている。
リカとサチ子はすでに甲子園まで新幹線で2往復しており、これ以上のお金は出せない状態。
一方の小学館予備校の2人は次の準々決勝の応援に行くと言う。
だが、当日行っても満員で入れないかもしれないと知り、墨谷のチャーターバスに潜り込むとか、リカとサチ子にツテはないのかなどあれこれ計画中。
一方、谷口の家にも多くの記者が押し寄せていた。
狭い道を記者の車が列をなして塞いでいる。
「都立校が天下の浪国を大・大・大逆転で破ってベスト8入り…」
「それだけでもとんでもないニュースなのに……」
「そこの監督が去年まで選手をやっていた! しかも今は”浪人生”!」
「こんなニュースバリューはない!」
と、まくし立てる記者たち。
「バ、バリューって?」
ついていけない父ちゃん。
「それにしてもお父さんもお母さんも甲子園には行かないんですね」
と、尋ねる記者。
「怖いから行けません! 息子が直にプレーしてるってんならまだアレですが、チームを預かってるわけですからね」
「TVも見れません! 結果はニュースで知るだけ!」
そう答える父ちゃんに記者は、
「明日はメディアジャックが起こりますよ。墨谷高校と谷口監督で」
と話す。
日本中に墨谷の名が響き渡るだろうと。
田所商会。
ショーウィンドウのテレビに映し出された墨谷のニュース。
それを見つめる人々。
店内では田所と田所の父親、そして倉橋がそれぞれ新聞を読みながら話していた。
「丸井だ! 近藤だ! 谷口監督だ! なんかおれの知ってる人達じゃないみたい…」
と話す倉橋。
「も…もう100万円寄付しないと…。もっともっとビデオデッキ売らんと…」
「と…父ちゃん。大丈夫?」
寄付の心配をする田所親子。
田所は、
「それはそーと、おれ達も意気地がないから2回戦の信州学園戦のアレがトラウマになっちまって浪国戦は甲子園行けなかった」
「次は行くよな倉橋」
と言い、
「勿論です田所さん」
と倉橋も返す。
そして近藤の家では仕事中にも関わらず記者たちに囲まれる近藤の父親の姿。
「準々決勝は彼の先発が予想されます!」
「お父さんは元ノンプロの選手だそうで…」
「その目から見た息子さん評を!」
と、盛り上がる記者たちに近藤父は冷静な様子で、
「茂一が準々決勝に先発したらヤバイですよ。それを選択する程谷口監督も甘くはないと思うんですけどねぇ」
と語るのだった。
ここで第120話が終わります。
なんとか抗議しようとした浪国監督でしたが、縞馬とカドバンがすんなり受け入れた事でそれ以上は言えなかったようです。
そして浪国に勝利した事で大騒ぎとなった墨谷とその周囲。
谷口や丸井は慣れない状況に動揺しつつも冷静に対応している感じがしました。
最後に縞馬が挨拶に来たシーン見ても、試合前の浪国はカドバンの印象が強かったけど、試合で印象残ったのは縞馬だったなという気がします。
次回は、
世間の注目は近藤へ全集中!
『先発させるか?させないか?』の巻
近藤の父親が最後に語った意味や、何より次の対戦相手など、気になることばかりです。
・第116話「センバツで帰ってこいの巻」
・第117話「どんどん前に飛ぶの巻」
・第118話「作戦なんて出来るわけないの巻」
・第119話「今度こその集大成!の巻」
・第120話「日本中の…の巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ
・キャプテン2(16)
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・プレイボール2(1)
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