第109話「見たことのないボールの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


浪国戦。
1回表2アウトから甘く入ったイガラシのストレートを縞馬が打つ。
打球は左中間へと大きく伸び、さらに浜風に乗る。
レフト片瀬がラッキーゾーンの金網に足をかけて、グラブを思いっ切り上に突き出してボールをキャッチ。
だが、態勢を崩してラッキーゾーンへ落ちかけると同時にボールもグラブからこぼれそうになる。
「落ちるなーー!」
片瀬が落ちるのを止めようとセンター島田がその足を支えた拍子に、ついにボールはラッキーゾーンへとこぼれ落ちてしまいホームランとなった。
「やったやった!」
喜びの声をあげながらダイヤモンド一周してきた縞馬をホームで迎える本山とカドバン。
「ナイスやシマ!」
「今日が最後……つー想いで打ったからな」
カドバンと縞馬が言葉を交わす。
一方外野では
「か、片瀬……」
「すまん。お、おれが余計なことしなければ……」

と、謝る島田と、ショックで声が出ない様子の片瀬。

ここで谷口が丸井をベンチに呼ぶ。
「今のは完全捕球のあとに落としてる」
谷口の言葉にハッとする丸井。
急ぎ球審に
「球審――今のは完全捕球のあとの落球です…。よってスリーアウトだと思います」
と申告。
すると少し考えた球審は塁審を集めて協議を行い始めた。
解説席でも
「う~ん。今のは完全捕球とも見えなくもなかった」
「墨谷が抗議したくなる気持ちもわかります」

と、解説者が語る。

審判団が協議を行っている様子に、
(完全捕球であってくれ)
と、祈るイガラシと、そんなイガラシの様子に
(なんて顔してるんだ)
(これは判定が覆らなかった時イガラシの精神状態も心配だ)

と、その表情から不安を抱く井口。
やがて審判団が散ると、球審が手を大きく回した。
「え」
思わず声をあげるイガラシ。
「完全捕球にあらず! よってホームランです」
球審に宣言によってあらためて浪国に3点が入った。
外野でも
「ああ~~」
と、落胆の声をあげる島田に片瀬が、
「仕方ありませんよ島田さん」
「切り替えましょう」

と、声をかける。

内野陣がマウンド上に集まる。
気持ちを切り替えるよう声をかけるがイガラシのショックは大きい。
(ひっくり返らないのなら協議などない方が良かった…)
と感じる井口。
だが、ここで丸井が、
「イガラシ……」
「なに鳩が豆鉄砲くらったような顔してる! これ位の事覚悟してなかったのか?」

と、強めの一言を放つ。
「今日はそういうつもりで臨んでるハズだよな?」
さらにそう付け加えられると、
「は、はい。そのつもりです!」
と、ようやくイガラシが声を出す。
「だったら何も落ち込むことねぇんだ。さあ次のバッターをかたづけるぞ」
と、丸井の鼓舞で内野陣は解散して守備位置へと戻った。

打席には6番端川。
「ランナーなくなってスッキリした! 気楽に行こう!」
丸井の声が響く。
(確かにこれ位のことは想定していた。ショックをうける方が間違ってる)
(カドバンに勝って喜んでいたおれがバカだったんだ)
(ここからは……堂々とふりかぶれる)
(もう……)
(どうにでもなれ!)

そう思いながらのイガラシの初球。
(ヤバイ! これも高めに入ってきた!)
焦る井口。
(打てそ!)
チャンスと見る端川がヒッティング。
打球はライト方向へと上がったが、ライト久保の守備範囲。
無事捕球して3アウトチェンジ。
ベンチへ戻る最中、今のボールについて
(コースはヤバイと思ったがボールはキレていた)
(やはり今日のイガラシは悪くはないんだ)

と、井口は感じていた。

ベンチに戻ったイガラシを
「イガラシ、ナイスピッチングだった」
と、迎える谷口に対して、
「いや、す、すいません」
と、謝るイガラシ。
そんなイガラシに谷口は、
「なあイガラシ。よく考えてくれよ。負けたのは縞馬に投げた1球だけだ。あと対戦した5人のバッターに対しては全てオマエが勝ってたんだ」
「全国レベルのトップに対する腕だめし…。イガラシのレベルも相当なものなんだよ」
と、続けた。
そうなんだ……。おれはカドバンには勝ったんだ。それだけで良しとしよう)
(そう考えるしかない)

谷口の言葉にイガラシはそう自分を納得させようとする。

1回裏。
マウンドに先ほどホームランを打った縞馬が上がる。
アナウンサーの情報だと縞馬は、1回戦延長11回を1人で投げ抜いて5安打自責点1。
三振12個を奪っている。
2回戦は9回完封。
11奪三振という成績。
ここまでの2試合で23個の三振を取っているという。

投球練習を終えた縞馬がマウンドを掘る。
「どした? シマ」
歩み寄って声をかけるカドバンに、
「短足のステップしたとこが合わなくてよ…」
と話す縞馬。
その様子をベンチから見ていたイガラシは、
(ん。なんだ! わざとらしく掘りやがって)
と、面白くない様子。
「その短足からおれはどん詰まりのライト前しか打てなかったんや」
「そっか……。いやいや。イガラシ投手のことは尊敬はしとるのよ…」

カドバンと縞馬がそんな会話をかわし、1回裏開始。
打席に1番丸井が入る。
「来い!」
気合い十分な丸井。
(小っちゃ! こんなんストライク入らんぞ)
どこか投げにくそうな様子の縞馬が初球を投じる。
(ストレート!)
(え?!)
(なんだ? バックネットに向けて投げた?!)

丸井がそう思うほど高いコース。
が、そこからボールが大きく曲がってくる。
(なにー?!)
ボールはそのまま外角低めへと大きく変化してボール。
そのあまりに大きな変化に愕然とする丸井。
(なんだ~~? このボール!)
一方の縞馬は舌打ち。
(やっぱ的が小せえや)
(ようし今度は横に曲がるカーブや)

2球目。
初球縦のカーブから今度は横のカーブ。
しかし丸井は、
(今度こそ……ストレート……)
と判断。
が、ボールは自身の背中を通ろうかというコース。
そのボールがまた手前で大きく曲がった。
(曲がった! 体に当たる!)
(わあ!)

ビックリして頭を伏せ気味に体を引くが、
(ちがう!)
(しまったストライクだッ!)

と思うも、ボールはまたも大きく外角にはずれてボール判定。
(なにいーー? あんなとこからあんなとこまで曲がったーー?)
今度もその変化に驚くばかりの丸井と、
(チィーー! 的が小さすぎるんだよッ!)
と、若干イラついた様子の縞馬。

ここで第109話が終了となります。

感想

前回ラストでの大飛球は結局ホームランになってしまったけど、カドバンだけを見ていたイガラシにとって全体を見るきっかけになりそうな感じでしょうか。
個人的には久しぶりに丸井のキャプテンらしさを見られて嬉しかったです。
丸井や谷口の言葉全てに納得した様子ではないにしても、イガラシが2回以降ショック引きずらなければいいのですが……。

試合前まではカドバンが目立っていたけど、この試合ここまでは縞馬にいいように振り回されてる感じでしょうか。
その縞馬も”的が小さい”丸井に苛立っている様子なので、そこに弱点があるのかなとも思ったのですが、

次回の、
いよいよ縞馬の本領が発揮される!
『魔法の国の世界』の巻

という予告を見る限り、まだまだ何か隠されている感じですね。

関連リンク

・第105話「自信をなくした男の巻」
・第106話「ザッピングの巻」
・第107話「今日で最後の巻」
・第108話「ツッパリがやってきたの巻」
・第109話「見たことのないボールの巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
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8 Thoughts on “「キャプテン2」第109話感想

  1. 初めて投稿します、よろしくお願いします。
    キャプテン、プレーボールはリアルタイムで読んでいましたし、こちらのサイトも更新を楽しみにして拝見させて頂いています。

    思うのは、何故谷口君を監督にまでして残したのか?です。
    キャプテンの集大成として、4人キャプテン集合をやりたかったのでしょうが、そうなると主役は谷口君になる。
    18才19才の若き監督なのだから、監督業をもっと悩んだり自分が選手の感覚で他の選手とぶつかったりするものじゃないかなぁと思います。
    なんか、今は高齢者の監督に見えちゃうんですよね。
    おそらく最初の頃にそれやっちゃったから、谷口ネタが無くなって来たのでしょうが、もっと采配とか監督ならではの悩みを描いて欲しいのですが、作者はそれほど野球経験が無いのでしょうね。

    プロ予備軍みたいな選手との対戦は、おそらくラストゲームぽいですが、プレーヤーとしての谷口君がやはり魅力があると感じています。

    • けるさん、コメントありがとうございます!

      墨二の歴代キャプテンが集結するって部分が目玉だと思いますが、その影響で個々の描写はどうしても薄くなってしまい、誰がメインなのかはちょっとわからない感じでしょうか。
      最初は谷口の監督としての苦悩を描くのかと思ったけど、キャプテンとして悩む丸井だったり、体格差などで悩むイガラシだったり、近藤の成長をメインにするのかなと思ったりと、その時々で変えている感じですねぇ。

  2. 匿名 on 2025年5月11日 at 9:35 AM said:

    謙虚なカドバンよりツッパリの縞馬の方が目立っていますね。そういえば青葉学院のキャッチャーの重いバット発言やアニメ版聖陵戦で倉橋は三振した相手にナイスバッティングと煽ったりとささやき戦術は結構使われているんですよね。縞馬を上手く怒らせていけば隙が生まれそうですが、南海戦みたいに乱闘になるかもしれませんね。

    • ここまでの描写ではカドバンより縞馬の方が強烈な印象ですよね~。
      井口の本来の性格ならあれだけ腹立てていたら縞馬相手でも食ってかかりそうだけど、あくまで冷静に作戦として揺さぶりかけてみるとどうなるのかなとは思っちゃいますw
      倉橋みたいに口が回るタイプでもないからどうなりますか……。

  3.  hiroさん、いつもレビューありがとうございます。

     この浪国というチーム、短足だとか的が小さいだとか、相手をなじる言い方が、どことなく「ドカベン」の土佐丸高を彷彿とさせます。的が小さくて投げにくいなんて、土佐丸の犬飼武蔵が明訓の殿馬に対して言っていたのとソックリですし。

     相手のキャラクターがハッキリしているので、浪国は作者さんにとって思い入れのあるチームということがうかがえます。試合はまだ始まったばかりですので、今後の白熱した展開を期待したいところですね!

    • 記憶さん、こちらこそいつもコメントありがとうございます!

      そういえば犬飼武蔵と殿馬の対決では、背の小ささやでっぱちゃんとか言うシーンありましたしね~。

      言われてみると浪国バッテリーはモデルもいるせいかキャラクターの個性わかりやすいです。
      縞馬のカーブ苦労しそうですが、これを墨谷打線がどのように攻略していくのか。
      楽しみです!

  4. 清貧一郎 on 2025年5月7日 at 9:45 PM said:

    こんにちは
    「的が小さい”丸井に苛立っている様子」
    似たようなことがあったなと思っていたら、プレイボール2の最初で丸井と井口の勝負で丸井が小さくてストライクがなかなか入らないことがありました
    それにしても、ずいぶん大きく曲がるカーブなんですね
    でもなんとか攻略方法を見つけて、打ち込むことを期待してしまいました

    • 清貧一郎さん、こんばんは!

      そういえば井口と丸井のそんな話ありましたね~。
      イガラシと井口どちらを投手として育てるかという時だったでしょうか。

      今のところ縞馬は丸井のように小さい選手には投げにくい感じですが、あのカーブが決まり始めると厄介そうですしねぇ……。
      墨谷がどう攻略していくのか楽しみです。

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