第55話「堕ちた信頼の巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


大島戦。
8回表からマウンドに上がった井口が失点を重ね、10対8とその差2点。
マウンド上に集まった墨谷内野陣の中で丸井は井口の気持ちの弱さを心の中で嘆いた。
不慣れな片瀬の守備で1点献上しただけなのにどうしてこんなにあたふたするのか。
自分との神社での特訓はなんだったんだと。
(投げるボールは鍛えられても……心までは鍛えられなかったというのか?)
倉橋も井口を交代させなければと考えていたが、
「こ、交代はさせないで下さい」
と井口が呟く。
まだ2点リードしている状況。
勝ち抜けてみせるから、責任イニングスは絶対行かせて下さいと直訴。
そんな井口に谷口は
「オマエに試練を与えて成長を促してるわけじゃないんだ」
「今は公式戦だ! 負けたらその瞬間に終わりなんだ」
「10対3から一気に10対8にされた。もう無理だ」
と通告。
目を合わせたまま動かない井口と谷口。
その様子に倉橋が不安を抱くが、
「そんなにマウンドを降りたくないのか? 井口」
と、谷口は倉橋の不安が的中する一言を放つ。
「これが最後だ。ランナーをひとり出した瞬間に代える」
そう言い残して各々が守備位置へと戻る。
谷口はライトの片瀬に
オマエは悪くない。気にするんじゃないぞ!」
と声をかけるが、当の本人はそれで気持ちが落ち着くわけもなく、またイガラシや倉橋も言葉にはしないまでも、井口続投の判断には納得できなかった様子のまま試合再開。
倉橋の中で井口への信頼度は落ちていた。

ファーストから井口の投球を見守る谷口自身も、自分は判断ミスを犯したのかと悩む。
(ここで降ろされたら…今大会は2度と投げさせてもらえないだろう)
と気合いを入れての井口の初球はボール。
だが、井口はここまでの失点に片瀬は関係なく、コールド勝ちにこだわって気持ちのコントロールができなかった自分が悪いのだと気付いていた。
今大会2勝した流れから今日もいいとこを見せようとしてしまい気持ちにスキがあったのだと。
だがストライクは入らずスリーボール。
それを見守る谷口は才能ある1年生を使っていく難しさを実感する。
井口やイガラシを戦力として練習試合でもメインに使って鍛えてきたものの、精神面からくるほころびがどうしても出てくる。
表面的な野球の技術だけでは計れないモロさを公式戦での2人から感じ取っていた。
結局井口はストレートの四球を出してしまう。
再びマウンドに集まる内野陣。
(おれは…聖陵戦に続いて…采配を間違えてしまった)
後悔する谷口は井口を下げてファーストに加藤を入れる。
ピッチャーには順番どおりに自身が入ろうとするが、この試合はイガラシと松川が2回ずつを0点に抑えており、谷口は3回を3失点という内容。
「順番をひとつ飛ばしておれが行きましょうか?」
とイガラシが提案する。
イガラシは今日の谷口はどこか体が重そうだと感じていた。
その提案に沈黙してしまう谷口と、その様子に
(谷口……迷っているのか!?)
(迷いながら交代を告げたのか?)

と動揺する倉橋。
しかし谷口はこの場面は1年を信用しない方がいいと判断。
さらに3年の自分が責任を持って1年生の尻ぬぐいをすべきだと考え、イガラシに自分が投げると告げる。

(おれは……またも采配を間違ったのか?)
どこか自信なさげに守備位置へ戻るイガラシの背中を見つめる谷口。
猛練習して技術や根性を鍛えようが、どんなに計算して試合のプランを考えようが試合は生き物。
肝心要のときはキャプテンである自分ががんばらなくちゃならないとし、この采配は間違いじゃないと言い聞かせるように初球を投げ込んでストライク。
その球を受けた倉橋は、今日投げた4人のピッチャーの中で谷口のボールが一番気持ちが入っていると感じていた。
だが同時に4人の中で一番球威がないとも……。
谷口は今年の大島なら絶対格下だと考えていたようで、勝利はかなりの確率で見込んでいた。
ところがうまくは事が運ばない。
自分たちが少々頑張ったところで甲子園を夢見るなんておこがましい話なのかと。
そんな谷口の姿に
『3年生の気迫』
を感じ取る井口。
ところがその気迫あふれる谷口の2球目は、ここでも『芯でコツコツと』を心掛けた大島打者によってライト後方へ大きく飛ばされてしまう。
「これは捕ってやる!」
ライトの片瀬が猛ダッシュで球を追いかける。
大島ベンチが2ランホームランを確信する中、片瀬はとうとうフェンスの前で向き直ってボールを待つ。
(ボールが落ちてくる…!)

ここで第55話が終了となります。

感想

谷口が迷いに迷う回でした。
計算通りには運ばない試合という生き物と、1年生の精神的な脆さを谷口が痛感。
大島を格下だと決めつけていた油断もここまで追い詰められた原因かもしれません。
救いは井口自身がこの大量失点を自分の気持ちの弱さやスキのせいだと気付いている点でしょうか。

最後はスタンドインすれば同点となる大飛球と、その球が落ちて来るのを待つ片瀬という場面で終了。
どういう結果が待ち受けているのか?

関連リンク

・第50話「巧妙なスライディングの巻」
・第51話「今年の大島の攻撃の巻」
・第52話「盛り上がるスタンドの巻」
・第53話「コールド勝ちへの道の巻」
・第54話「割り切ったバッティングの巻」
・第55話「堕ちた信頼の巻」
「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ

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7 Thoughts on “「プレイボール2」第55話感想

  1. ベレーナ on 2019年8月24日 at 12:14 AM said:

    心の隙を痛感したあたり、井口の新しい成長が見られた回でしたね

    逆境や葛藤と向き合いながら努力と試行錯誤を重ねてナインが成長するのがキャプテンからある「読者を惹きつけて話さない」魅力なのでそこが今回は際立っていたように思います。

    谷口、丸井、半田はからっきしながら努力と工夫だけで這い上がった叩き上げ

    イガラシ、井口、近藤、片瀬は実力は抜きん出ているがワンマンで過信が多い→周囲の影響と挫折で改善というスポーツ漫画の王道を守っている点も◯

    次回も倉橋がキーマンになると予想します

    • 井口が自分で心のスキに気付くとは思っていませんでした。
      でも彼にとっては大きな成長だったと思います。

      選手個々の性格だけではなく、実力がある選手はワンマン部分が目立つよう表現されていますね~。
      ここまでいいとこがない片瀬のカットで終わったので、ぜひ彼にも活躍して欲しいところなんですがどうなりますか……。

    • 考えてみれば倉橋も人間的に著しく成長した一人ですよね。入部した頃は物をハッキリ言い過ぎてよく先輩を怒らせるトラブルメーカーでしたけどね。
      ベレーナさん仰るように、キーマンは倉橋。倉橋の存在は大きいですね。

  2. けん on 2019年8月21日 at 9:11 PM said:

    前号で「最悪の悪夢」って言ってたんだから同点になるんでしょうか?それとも片瀬のファインプレーが見られるのか?でもファインプレーなら最悪の悪夢にはならないですよね(笑)。いずれにしてもここで大島に敗れることはないと思うんですけどね〜。
    この試合はキャプテン谷口にとっても試練ですね。この試合を乗り切ったら谷口も井口も片瀬ももう一皮むけるかも知れませんね。

    • 「最悪の悪夢」
      だから同点かなぁと思ったんですけど、最後のページを見ると片瀬がやってくれそうな気もするんですが読めないですねぇ……。

      今回の話では谷口も相当悩んでいましたし、1年生の起用法や交代時期に関しては「プレイボール2」を通してずっと谷口を悩ませていますね~。

      • けん on 2019年8月22日 at 1:40 PM said:

        こんにちは!
        プレイボール2の6巻買いました?
        最後のページに特別解説『半ちゃん』のページがあって、「半田=半ちゃん
        !?」となってました。そして、「幼き頃の姿…!?天才・イガラシも登場」と書かれてました。やっぱりあの頃の2人は、墨高野球部の半田とイガラシなのかなぁ?そうあって欲しいです。と、言うのも聖陵戦勝利の後、田所さんのおごりで松羽にうな丼を食べに行ったシーンで、谷口、丸井、イガラシ、半田が同じテーブルでうな丼を食べてるんですが、イガラシと半田が隣合わせなんですよね。細かいとこですけどちょっと感動しました^_^

        • こんにちは~!
          単行本で買おうか電子書籍で買おうか迷っていて6巻まだ買えてないんですよねぇw
          5巻までを電子書籍と単行本で中途半端に揃えちゃって……。

          特別解説ページや松羽での食事シーンのお話を聞いた感じだと、けんさんがおっしゃるように「半ちゃん」に登場した半田とイガラシが今の2人のようですね~。
          直接的な話は出ないけど、そういう何気ないシーンでわかる人にはわかるという演出はいいなぁ。

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