第37話「今年のキャプテンの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
初回、聖陵打線を3者連続三振に切った墨谷先発のイガラシ。
ナイスピッチングをみんなが声をかけながらベンチへと戻る中、谷口だけは
（いつもとどこか違うと思ったのはおれの気のせいだったのか？）
と、プレイボール前に感じた違和感を拭いきれない様子。
しかし、それはイガラシが公式戦初先発の緊張から昨夕一睡もできなかったもので、イガラシ自身も初回のボールの走りに内心驚いていた。
「イガラシ。あと2イニングス。この調子で飛ばしてくれよ」
そう声をかける谷口に
「はい」
と返事するイガラシだが、心の中ではやはり井口への対抗意識からかもっと投げたいと感じる。
一方の聖陵キャプテンでありキャッチャーでもあり刈谷の準備を手伝うモウちゃんと広瀬。
2人に関して半田から情報を得ていた谷口はその様子を見ていたが、前情報ではスタメンのはずが、どうやらOB西田ではなく、現行キャプテン刈谷の意向が勝ったようで、先発には名を連ねてこなかったらしい。
だが、刈谷は2人に準備だけはしておくよう指示。
聖陵の先発は昨年対戦した際に中継ぎで登板した左腕の木戸。
その時はストライクが入らずにマウンドで泣いていた事を谷口は思い出しながら、エースとなった今年はどんなピッチャーになったのかと考える。
1回裏。
墨谷の1番打者丸井が打席へと立つ。
1球目を見送った丸井の木戸への印象は、
（佐野よりは落ちるがクセ球）
だということ。
2球目を打ち返した打球は右中間を抜けて3塁打コース。
ファーストを回るところで聖陵のファースト荒井が走塁上へと立って妨害を試みるが、そういう練習をしていた事を半田の情報で知っていた丸井は直前で走塁コースをそれよりも内側へと変え、予定どおりの3塁まで到達。
いきなりのピンチにマウンド上に集まる聖陵内野陣。
「まあまあ。今のは振り遅れたのが右方向に行っちまっただけのことだ」
思った以上に伸びた打球に驚く木戸に刈谷がそう声をかけるも、木戸はどこか納得できない表情。
刈谷は初回からスクイズはしてこないと考え、内野にやや前進守備しつつゴロならバックホームを指示。
（1点は覚悟か？）
まだ動揺を隠せない様子の木戸。
そして2番打者イガラシに対して谷口は
「ヒッティングだ。思いっきり行け」
と指示。
（外野フライも打たせたくない）
（三振か内野ゴロを取る！）
気合いの入った木戸の初球をイガラシはヒッティングするもほぼレフト定位置。
あまりに浅いフライにタッチアップの判断に迷う谷口だったが、
（東実戦は初回“丸井の足”で先制した）
（そして結局あの試合はその1点のみだった！）
ことを思い出し、丸井に行けと指示。
その声を聞いた丸井は捕球と同時にスタート。
そんな丸井にベンチの倉橋が声をかける。
「気をつけろよ！」
「お家芸の『キャッチャーのマスク置き』！」
昨年の聖陵キャプテンであり捕手だった西田が使った手を丸井も当然覚えていたものの、刈谷がホームベース上にただ突っ立っているだけ。
（ブロックする素振りさえしてない！）
（ボールが来てないのか！？）
戸惑う丸井。
しかし、
（いや演技だ！）
と、自分を油断させているのだと判断。
谷口の
「滑れ！」
「まっすぐだ！ まっすぐ滑れ！」
という掛け声を聞くが、ベースの上に立つ刈谷に丸井は外側から回り込んでベースタッチを狙う。
ところがベースに手が届かず、慌ててタッチしにいこうとするも刈谷のミットに阻まれて惜しくもアウト。
結果、先制のチャンスはダブルプレーに終わってしまった。
その刈谷のうまさにスタンドの聖陵OB陣も賛辞の声。
聖陵ベンチでは
「セコイんだか巧みなんだか……刈谷さん」
「だが走路にマスクを置く行為よりもよっぽどマシか？」
とモウちゃんは話すが、広瀬は今のがイチかバチか勝負にいったプレーだという。
何もしなかったらタイミング的にセーフだったが、ああいう立ち方をする事でランナーの判断を惑わせ、回り込ませた事で滑ってしまってベースタッチできなかったのだと。
「だが、まっすぐ滑り込まれたら足をすくわれる危険性があったぜ」
と話すモウちゃんに、だから賭けに勝ったのだと話す。
そんなプレーをこの状況で冷静にできてしまう刈谷。
「刈谷キャプテンの方が西田キャプテンよりクレバーということか？」
モウちゃんと広瀬はそう考えるが、自分達を買ってくれているのは西田で、刈谷はスタメンから外した事に複雑な表情を浮かべる。
ここで37話は終了となります。
昨年、墨谷との対戦で中継ぎとして登板してマウンド上で泣き始めた木戸が聖陵のエースになっていました！
でも、今回の木戸の様子を見る限り、昨年よりも成長は見られるものの、やはりメンタル面の弱さはまだまだ残っているように思います。
また、刈谷は西田とは違ったタイプでやりにくい相手だなという印象ですね。
OB西田の進言がありながらモウちゃんと広瀬を先発から外したのにも何か理由がありそうな気がします。
一方、そんな刈谷の作戦に惑わされた丸井が、谷口の指示通りに突っ込まなかったがために先制を逃した墨谷。
この判断ミスが後々どう影響してくるか？
