水木しげる氏の漫画「不思議な手帖」の感想です。

山田が手にした手帖とは?

この物語の主人公は市役所勤めの45歳になる山田と言う男。
その歳になっても出世しない彼だが、その顔は誰よりも満ちたりており、それが若い職員たちの間で話題となる。
彼には誰にも知られていない秘密があった。

それは偶然手に入れた
「不思議な手帖」
の存在である。

その手帖に書き込まれた名前の人物は必ず死ぬという恐ろしい手帖であり、それまで冴えない人生を送っていた山田の気持ちは一転。
「僕は……宮本武蔵以上だ」
という気持ちが彼を充実させたのだった。

ここまで読んで、漫画「DEATH NOTE」を思い浮かべた人も多いのではないでしょうか。
実際、その類似性が話題ともなったようです(wiki参照)。

ただ、山田がこの手帖を用いて
「気に入らない人物を殺す」
「正義のために悪人を殺す」

といった直接的な描写はなく(古ぼけた手帖に何かを書き込んでいるシーンはあるが「不思議な手帖」なのかは不明)、唯一書き込んだのは手帖の力が想像通りか試すため、自分によく吠える隣りのポチのみ。
犠牲にした人数がこの1匹だけという証拠もないが、少なくともむやみやたらに手帖で人を殺すタイプではないと思われる。

ところがそんな山田の平穏な日々を一変させる人物が職場にいた。

ねずみ男に妹がいた!?

経理の古参でその名も
「ねずみ女」

経理のお局らしく、若い女性社員からは小言を疎まれているようだが、彼女たちが小馬鹿にしている山田に対しては好意を抱いているようで何かと庇う。
そして山田の方もまたねずみ女(の太もも)に魅力を感じていたらしく2人は意気投合。
山田から「不思議な手帖」の秘密を聞き出したねずみ女は、これまで長年に渡ってちょろまかしてきた帳簿の件など、自分の立場を危うくしそうな存在の名前を片っ端から手帖へと記し、邪魔な存在を消すようになる。

そんなねずみ女に怒りと愛想が尽きた山田は別れを告げるが、ねずみ女の捨て台詞にくわえ、
「兄がねずみ男」
だと知らされた事から、仕返しされてはたまらないと「不思議な手帖」にねずみ女の名前を書いて殺してしまう。

なお、彼女が本当にねずみ男の妹なのか実際の繋がりはわかりません。
他にそういった描写のあった作品を私が知らないだけかもしれませんが……。

だが、酒を飲みながらねずみ女との思い出に耽る山田は
「本当なら僕の名もこの横に書くべきかもしれない」
という自責の念から、こぼれた涙で自分の名前を手帖に書いて死んだつもりになり、以後絶対に手帖は使わないと机の奥へとしまい込んだ。

時も経ち、山田の生活がすっかり普通へと戻った頃。

家の掃除をしていた山田の妻が、机の引き出しから出てきた「不思議な手帖」を他のゴミと一緒に焚き火で燃やしてしまう。
塩分を含んだ涙で書かれた山田の名前があぶりだされた瞬間、丁度ビル工事の現場を歩いていた山田は落ちてきた鉄材の下敷きとなって死んでしまうのだった……。

感想

結局ラストは山田が望んだ報いを受けて終わったという形ですね。
おそらく手帖の悪用はしていなかったと思われる山田ですが、ねずみ女と関係を持った事が彼の人生を大きく変えてしまいました。
あのまま彼女との関係が発生しなければ、山田はその後も地味ながらに充実した日々を過ごせたのではないでしょうか。

そこに書かれた名前の人物は死んでしまうという「不思議な手帖」
「もし自分がそんな手帖を手にしたら?」
悪用しないと言い切れる自信は……いや、私は気が小さい人間ですからとても使えませんねw

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