第59話「丸井、現る!の巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
11対10で大島に勝利した墨谷。
両チーム整列して試合終了のあいさつをする中、ベンチ前でその様子を呆然と見つめる大島監督は、9回裏のイガラシのボールが最初にマウンドに上がった時よりも良く、墨谷全員が乗っていたと考えていた。
(そりゃあんなホームランが出たら”みんなの勇気”になるのか…)
(あそこであんなホームタンを打たれたら負けだったんだ…)
と。
一方、スタンドで次の相手が墨谷に決まった事を確認した川北の田淵監督だが、
「谷口クンの”粘り”には感心したが…その前に『同点ツーランホームラン』を打たれたのも”彼”だからな」
「終わってみれば11対10…」
「強いんだか弱いんだか……?」
と、掴みようのない様子で球場をあとにする。
ベンチ前でスタンドに挨拶をする墨谷ナイン。
そんな谷口たちにスタンドからは歓声が沸き上がるが、
「ぜ、ぜんぜん……」
「芯に当たっていなかったよ」
と、谷口は9回表に打った左翼ポール直撃のホームランが、ファールにしようとバットを振り抜いた結果打球が上がり、真横からの強風に乗っかってフェアグラウンドに押し戻されたからボールが飛んでくれたのではないかと話す。
それが金属バットの芯の広さなのか、それとも半田のアドバイスで『バットを振り抜いたから』なのかがわからない様子の谷口に、
「いえ……『パワー』だと思います』
と半田が声をかける。
谷口のパワーがあそこまで運んで行ったのだとし、感動しましたと伝える半田。
そんな中で1人、今日の試合に納得がいかない様子の丸井は、奇跡的なホームランには心底感動したが、今日の試合はマズかったんじゃないのかと考え、
(あやうく『みっともねえ負け方』をするとこだった)
(今日の谷口さんの采配はどこかおかしかったんじゃねえのか?)
と、危機感を抱いていた。
同日。
それぞれが帰宅した後、丸井は1年ぶりだという谷口の家を訪れる。
相変わらず谷口の前、谷口の家では落ち着かないのか、1年前に訪れた時同様、谷口が姿を現すとその場で深々と頭を下げて挨拶する丸井。
「今日のホームランおみそれいたしやした。本当に感動しました」
「試合が終わったばかりですがこの感動をお伝えしたくて…」
丸井の仰々しい態度に戸惑いながらも谷口は、
「なにか言いたいことがあるんじゃないのか?」
と問いかける。
「い、いえ別に…何も…」
そう答える丸井に谷口は、
「じゃあ丁度いい。おれの方が…丸井に言われる前に……ひとつ謝っとかにゃならんことがある」
と切り出す。
それは半田に秘密特訓をしたことだった。
『バントの名手半ちゃん』
だったらバスターは合理的な打法だと思い、居残りで徹底的に練習させ、それに自分もバッティングピッチャーとして付き合ったと。
そして大島戦の2日前に300球投げた事を伝え、東実戦前に丸井とイガラシに
「大会中の居残り練習は控えるんだ!」
ときつく言い聞かせた自分が正反対のことをやってしまい、その疲れもあって大島戦で5点も献上してしまったという。
その話に多少驚きつつも、
「で、でも谷口さん。その時…燃え上がっちまったんですよね?」
「理屈で考えるより体が動いちまったんですよね?」
「正直そっちの方が谷口さんらしいですよ。なんかうれしいなあ……」
と返す丸井。
谷口は谷原との練習試合でケチョンケチョンに負けた時から、
『考え過ぎ』
と言われても仕方ないくらいに色々考えるようになったという。
誰をどこにどのタイミングで起用するか。
今日の試合で采配を間違えたと言い切る谷口。
半田のバスター特訓も直感的に
『使えるものは全て使いたい』
と思ったからとことん付き合ったが、それは無計画な行為だったのだと。
「丸井は鋭いからそういうおれの迷いみたいなものをどこかで見抜いているんじゃないのか?」
そんなこと考えていませんと返す丸井が
(谷口さんには谷口さんの”想い”がある。おれなんかがゴチャゴチャと言うことじゃないんだ)
と考えていると、
「か…勝ちたいんだ」
「谷原に……勝ちたいんだ…」
と、絞り出すように谷口が呟く。
その様子に何も言い返せない丸井。
2人の間に沈黙が訪れる中、母ちゃんがお茶を運んできたところで、突然田所がやって来る。
声が聞こえたのか、
「谷原がどうしたって?」
と問いかける田所に口ごもる谷口だったが、
「オマエ達の次の相手は一体どこだ?」
とさらに突っ込む田所。
川北だと返す谷口に、今日の神宮第二で行われた川北の試合はTV中継があったらしく、田所の店のビデオで録画していたらしい。
「谷原の話なんて100年早いだろ」
「まずは今日の川北の試合の分析だ。今から来れるメンバーをかき集めろ」
こうして集まった墨谷ナインが田所電機商会の前までやって来たところで第59話が終了となります。
やはり谷口にとって谷原との練習試合の大敗は相当なトラウマになっているんでしょうね。
谷口自身も今の自分が色々考えすぎて迷いを持っていると自覚していたようですが、そんな迷いの根源ともなっている谷原以上に目の前の一戦が重要だと目を覚まさせる田所の存在はありがたいところです。
次回は田所の店にあるビデオレコーダーで川北商業の試合の様子をチェックするようですが、
『昭和53年。待つのはベータか? VHSか?』
という予告文に時代を感じさせられました。
・第55話「堕ちた信頼の巻」
・第56話「試合の流れの巻」
・第57話「バットは振り抜け! の巻」
・第58話「空気を読まぬ男の巻」
・第59話「丸井、現る!の巻の巻」
「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
田所さんもすっかり変わりましたよね。田所さんは確かジャンケンでキャプテンになったんでしたよねw。田所さんは21歳になるのかな?今や田所商会の専務様ですもんね。若いのに大したもんです。
今回の話は良かったですね。
試合以外の日常の場面のほうがどっちかと言うと好きです。そう言えば、丸井の私生活って謎ですよね。谷口の家は大工、イガラシの家はそば屋、近藤の家は車の修理工場。丸井だけが何の情報もないですよね。墨高をスベって朝日高に入学したってことくらい?ちなみに加藤も丸井と同じ朝日高の帽子を被ってましたよね。でも加藤は島田と一緒に墨高の野球部に入部してるという(笑)
それはともかく、丸井の家は何だろうと気になるこの頃ですww。
コメントありがとうございます!
田所がキャプテンになった経緯ってジャンケンでしたねw
勝ちたい谷口に対して、野球を楽しみたいという田所では野球に対する考え方が異なるんでしょうけど、そんな谷口をしっかりフォローしてくれるいい先輩ですね。
そうそう、谷口、イガラシ、近藤の3人は家や部屋まで登場しているけど、丸井の私生活だけは全くの謎なんですよね~。
次回で登場するであろう田所電機商会の店内や部屋も気になりますが、そのうち丸井の家や部屋も見てみたいなぁと思いますw
試合の時より、胸が熱くなってしまいました。私は谷口というキャプテンが大好きで、なので、どちらかと言えば、「キャプテン」の方が「プレイボール」よりも好きです。また、谷口というキャプテンが好きなので、キャプテンも全巻持っていますが、谷口以外の話は一度くらいしか読んでいません。丸井もキャプテンとしてはすきではないんですが、この谷口愛にあふれる丸井、大好きです。そしてその丸井を信頼し、丸井を自分の一番の理解者だと思っている谷口、この師弟愛こそが、私がキャプテンが好きな理由なんだな、と改めてこの話を読んで思いました。
そして、谷口の先走る思いをたしなめる田所。彼もまぎれもなく立派な墨高のキャプテンです。墨高の顧問ですね。谷原に勝ちたい気持ちはわかります。私だって買ってほしい。でも、まず次の試合に勝っての話。また、谷原に勝つことが最終目的では困るのです。墨高には甲子園に行ってもらわねばいけないのです。
熱く語ってしまい恥ずかしいですが、これからもHiroさんのプレイボール、楽しみにしています!
いつもコメントありがとうございます!
Biromiさんの「キャプテン」に対する想いがすごく伝わってきました。
多くの場面で丸井が一方的に谷口に惚れ込んでいるだけに見えるけど、実際「キャプテン」時代も谷口は丸井に相談したりと、両者の間に信頼関係があるんですよね。
今回は悩める谷口の気持ちがわかるからこそそれ以上言えなかった丸井ですが、そこを田所がOBとして見事にたしなめてくれた気がします。
「プレイボール」においては田所の存在はやっぱり大きいなと思わされました。