第122話「球歴が部長クラスの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


御法島高校戦。
1回表墨谷のマウンドには近藤が立っていた。
「あれが近藤かーーー!」
「まだ1年なんやろーー?!」
「浪国から9連続内野フライ!」
「10人パーフェクト!」

スタンドからはテレビでも話題の近藤のピッチングを最初から見られると喜びの歓声が挙がっている。
「うわ~。スタンドの皆さんがワイに注目してくれとるのがわかる」
(うわ~~~~。地に足がついてないよ~~~ッ)

すっかり舞い上がっている近藤。
「さ~これは楽しみです! 近藤クンが春の優勝校御法島相手にどんなピッチングをするのかー!?」
「御法島はセンバツの決勝でカドバン・縞馬を擁する浪国と激突!」
「なんと7対8というスコアの死闘を演じて紫紺の優勝旗を手にしたのです!」
「浪国高校が敗れてしまった今、優勝に最も近くなったと言っても過言ではないでしょう!」
「長い歴史で春・夏連覇を果たしたのは今まで2校だけ! 3校めになれるか? 和歌山県代表御法島高校!」
「そしてこのチームの指揮を執るのは…!」

実況席の盛り上がりも十分。
「くくく……」
御法島のベンチで静かに笑う監督。
「さあさあ今日も楽しいでえ~甲子園! 楽しめ楽しめ楽しめ! もう苦しい練習はせんでええんや。3年はな!」
そして楽し気に告げる。
「2年はありますが…」
と、2年生選手が口にするが、
「大会中はない! 遊びやからな! 野球は棒振り遊びやーーー!」
「あと3日棒振り遊びを楽しみ尽くす!」

と、監督は豪快に告げる。

「甲子園の名物監督藤尾正! 36歳! 甲子園で最も有名な監督です!」
「なんと言っても藤尾監督はここまで春の甲子園6回出場! 夏の大会は4回出場! その内春の隊かいで3回も優勝しているのです!」
「名物監督にして最高の名監督! その称号に揺るぎはないでしょう!」
実況者が御法島高校藤尾監督を紹介。
続いて、
「そして一方の墨谷は……!」
「去年まで選手だった……今年は浪人生の谷口タカオ! 19歳! 墨谷高校は甲子園初出場!」

と紹介。
続けて解説者が
「こんな言い方したら失礼ですが、藤尾監督は成人男性…それも会社の部長クラスだとしたら…」
「谷口監督はヨチヨチ歩きの赤ん坊」
と話し、
「それ程キャリアのキャリアの差がある…と」
そう尋ねる実況者に、
「藤尾監督がすごすぎるんです。誰と比べても似たようなもんになるんですが…」
「ただとにかく墨谷は浪国を破りました。この試合は何が起こるかわかりません」

と、解説者は話す。

「近藤」
マウンド上の近藤に松川が声をかける。
「いいか。オマエは何も考えずに全力投球してりゃいいんだ」
「オマエの後ろにはおれも井口もイガラシも控えている」
「行けるとこまで行きゃいいんだ」

そう伝えて守備位置へと戻って行く。
(そうや。ワイの後ろには頼れる先輩達が3人もついとるんや)
と、近藤も少し安心した様子。
そんな近藤を見ながら井口は考える。
(近藤……オマエが倒れたらその時はおれがマウンドにすっ飛んでいく)
(だが……おとといのあのピッチングが脳裏に焼きついたままのおれ…)
(あのボールが打たれる瞬間が本当に来るのか?)

と。

そして打席に御法島1番キャッチャー田嶋が入る。
ここで御法島高校のスタメンの紹介。

1番 田嶋(キャッチャー)
2番 本宮(レフト)
3番 山野上(セカンド)
4番 野北(ファースト)
5番 野上(ショート)
6番 川森(センター)
7番 久宝(ライト)
8番 榎木(サード)
9番 一色(ピッチャー)

4時6分。
試合開始。

近藤が1球目を投げる。
田嶋は見送ってストライク。
(おお。ええボールや)
(こりゃ騒がれとるだけのことはある)

そう思う田嶋。
(1球め……良かったよ…)
と、受ける井口も良い反応。
「1番の田嶋クンは今大会がなんと4回めの甲子園」
「最初に出場した2年春がベスト4」
「2回め! 2年・夏は3回戦敗退」
「3回め! 3年・春は優勝…」
「そして今大会。ただ今ベスト8! 甲子園の今までの打率なんと4割!」
「ここまで練習試合のホームランの合計は20本! 輝かしき球歴の恐ろしき1番打者!」

と、実況者が田嶋の成績を伝える。
(球歴が部長クラス……)
(そこに行くと近藤は生まれたばかりの赤ん坊)

と、井口も考える。

場所は変わって近藤モーターズ。
近藤父が仕事をしながらラジオで試合の様子を聞いている。
近藤の2球目。
強振する田嶋だが空振り。
(おお! 当たらなかった!)
と、驚いた様子ながらもその表情はどこか余裕を感じさせる。
その様子を聴いていた近藤父の元に市川記者が訪れた。
「甲子園へは…?」
と尋ねる近藤父。
「そりゃ若手の仕事でしてね。私は東京でお留守番」
と答える市川。
近藤父が甲子園へ行ってないと聞いてやって来たらしい。
ちなみに谷口の父ちゃんも甲子園へは行かずにこの日も仕事中。

近藤父と市川は座ってラジオを聴く。
「甲子園に応援に行ける人はある意味負けを覚悟している。今日が最後かもしれないから瞼に焼きつけておこう――と」
だと話す市川。
逆に行けない人は
「負けるのがイヤ」
「どこかで勝ちを信じている」

目の前で見れる勇気がない人だという。
そんな市川の分析に近藤父も、
「さすがベテラン記者。小市民の心情が読めている」
と認めながらも、
「それもあるが……。息子の青春にふり回されたくない。親はあくまで普通の営みをしていなければ…。果報は日常を変えないことです!」
「谷口監督のオヤジさんは私以上に小市民なんでしょう。行けない気持ちがよくわかります」

と話す。
「あなたは勝負師だ。墨谷が勝てる可能性はあると思っている」
とする市川に近藤父は、
「息子が先発しなかったら……30%位あると思ってました」
「先発してしまったから5%に減ったかな…?」

と話し、
「ただの謙遜とも思えませんな。アナタが言うのなら」
と続ける市川に、
「自分の息子が全国からこんなにも注目される日が来るとは思いませんでした。しかしその”注目”がマズイ。ウチの息子はみんなから期待されてる時はダメ」
「だが期待されてない時は意外といい働きをする」
「そーゆー選手の典型かな? 市川さんも記者が長いからいっぱい見てきてるでしょ」
と話す。
そうこう話しているとラジオから
「田嶋クン打った!」
との声に2人は反応。
田嶋の打球はジャンプするショートイガラシの後方へ飛んで行きセンター前ヒットとなった。
ここで10人連続パーフェクト中だった近藤の記録は途切れた。
(さすが天下の田嶋と言いたいとこだが…。今のは押されてたぞ。あとちょっとでショートフライだった)
と、近藤の球威は悪くないと考える井口。
一方打った田嶋は、
(確かにすごいボールを投げてくるが打って打てん事はない)
との感想。
「早速襲いかかってくるか…?」
放送を聞きながら呟く近藤父。

打席に入った2番本宮はバントの構え。
初球から送りバントを成功させて1アウト2塁。
「息子も豪速球と言われとりますが簡単にやられます」
「いやいや送りバントはアウト一個貰ったって事ですよ」

ラジオを聴きながら話す近藤父と市川。
打席には3番山野上。
こちらも初球からヒッティング。
打球はショートゴロとなりイガラシが抑える。
2塁ランナー田嶋は3塁へ向かう。
「イガラシ無理するな! ファーストでいい!」
井口からの声にイガラシはファーストへ送球してアウト。
2アウト3塁となった。
だが近藤父は、
「御法島はジワリジワリとランナーを進める」
と、まだ慎重な口ぶり。
一方の市川は、
「でもアウトふたつ取りました。茂一クンもジワリジワリ取ります」
と、前向きな言葉を口にする。

打席には4番野北。
「ランナー3塁まで行っている。ツーアウトと言ってもひとつのミスで点は入る…」
と話す近藤父。
そして市川と2人で静かに実況を聴く。
「近藤クン第1球投げた」
「見逃した。判定は外角ギリギリストライク」
「第2球投げた」
「初球と同じようなボールを見逃して…これもストライクのコール。ツーナッシング」
「第3球投げた」
「これは1球外したボール。カウント2-1.そして第4球……投げた!」

この球に野北が反応。
(打つ!)
打ちにいくが空振り三振。
「お。初回0で切り抜けた…」
そう口にする市川だが、近藤父は何か思うところがある表情を浮かべるのだった。

ここで第122話が終わります。

感想

完全に浮き足立ってる近藤ですが、松川の言葉に少し余裕ができたのでしょうか。
ヒットを打たれながらも1回表は0点に抑えました。
前回の様子からいきなり大量失点するかと思っていたのでまずはひと安心しました。
でも、近藤父の嫌な予感はまだ消えていないようだし、御法島もさすがに近藤の球に対応しているので、この先まだ何が起こるか……って感じです。

次回は、
プロのスカウトの評価は?
『上流階級のけだるさ』の巻

御法島の藤尾監督がまた今までにいないタイプと言いますか、掴みどころない雰囲気なのが不気味です。

関連リンク

・第118話「作戦なんて出来るわけないの巻」
・第119話「今度こその集大成!の巻」
・第120話「日本中の…の巻」
・第121話「先発させるか? させないか?の巻」
・第122話「球歴が部長クラスの巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
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8 Thoughts on “「キャプテン2」第122話感想

  1. まもる on 2025年11月19日 at 8:28 PM said:

    お疲れ様です、いつもありがとうございますm(_ _)m
    うーん嫌ですね、初回先制点入れられて欲しかったかな、入らなかったと言うことは、それこそ決勝までピシャリと抑えるか、とっても大事な場面、ここだけはダメよってとこで打たれて点取られるかの2択がかなり確率高いですよね。
    次回墨谷が先制したら先制したで、近藤が打たれ出しても大出血まで引っ張りそうだし。
    次回以降が怖くなる0点でした。

    • まもるさん、こちらこそいつもありがとうございます!

      なんとなく0点に抑えたけど御法島打線は近藤の球を当てているし、今回の描写だけでは何とも言えないけどどこか余裕感じさせられるんですよね~。
      それがどうにも不気味に見えました。
      まもるさんのおっしゃるようにこれで気を良くした近藤が大事な場面で失点、あるいは2回り目くらいで一気に……っていうのが心配ですねぇ……。

  2. 試合開始されましたね。
    近藤のメンタル面に注目が集まりますが、
    この大一番、他の選手も緊張があって当たり前の状況ではありますが、
    墨谷ナイン側の松川と井口のセリフから察するにかなり落ち着いている感じに頼もしさを感じました。

    試合の進行は現場より
    ラジオでの近藤親父さんをフィルターにして見せている感じで、
    なんとももどかしさを感じる見せ方で、
    常に期待と不安が付き纏いドキドキ、ハラハラ感が堪らないですね。

    • ついに始まりました!
      言われてみると近藤にばかり目が行ってましたけど、少なくとも松川や井口、それに守備機会あったイガラシも落ち着いている感じでしたね~。

      おっしゃる通り今回は近藤父と市川記者がラジオで試合の様子を聴くっていう形で見せてきたので、実況だけで現場を知るというドキドキ感がありました。
      それが余計に御法島打線の不気味さを出していた原因かも。

  3. にしなさとる on 2025年11月19日 at 8:25 AM said:

    最初から異様な雰囲気の甲子園。
    一見何も起こっていないように見えるが、解説者の言う通り、その実何が起こるか判らない、波乱含みの試合、というところでしょうか。

    • 近藤への期待の大きさがスタンド中から伝わってくる中、御法島の紹介聴いてるだけだと圧倒的な差を感じさせられました。
      近藤の球にも最初から対応しているし、周囲の騒がしさに比べて試合は静かに始まったと言いますか、まだまだ見えてこない御法島の実力がなんとも不気味です……。

  4. おはようございます!
    先頭の田嶋の打って打てんことはないの一言と、近藤パパの勝率5%の言葉が気になりますね。あと御法島高校藤尾監督が遊びを遊び尽くすの言葉は、墨谷の甲子園初戦前に墨谷の部長が言った言葉に似てる気がします。名物監督対名監督の戦いになると予想しますが、墨谷はチームワークは抜群。バックに丸井、イガラシがいるし打たれても井口がいるので近藤も精神的には楽でしょうが近藤パパは逆にそこを心配してるのかな?

    • けんさん、こんにちは!

      田嶋からは近藤の球にびっくりはしているけど全然余裕が感じられたんですよねぇ。
      甲子園経験の差かもしれないけどなんだか不気味に感じました。

      そういえば部長もそういう事言ってましたね~。
      意味合いは違うかもしれないけど結果として選手に与える影響は似たようなものがあるのかなぁ。

      近藤パパが終始考えを変えなかったとこ見ると、どこかで打たれるかなぁと考えてしまいますが、
      近藤自身は松川の言葉で少し落ち着いた気もするし、このまま滅多打ちさえされなければいいのですが……。

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