第105話「自信をなくした男の巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


二回戦で9回、信州学園に打ち込まれたイガラシは、谷口からあらためて三回戦先発と相手が浪国高校である事を伝えられる。
「あの……浪国高校……」
昨年、本来東実が相手するはずだった練習試合に墨谷が代役として相手し、実力では浪国が圧倒的だったはずが結果は7対7の同点に終わった。
墨谷をナメていた事に加えて、谷口も選手としていた結果だとする丸井。
それでも7対7は奇跡だったと話す松川。
そして谷口は、
「結果的にあのチームは…浪国的には弱いチームだった…。大阪大会ベスト16で終わっている」
と、自分達が戦った浪国は浪国としては弱いチームだったと分析。
だが、秋から作った新チームは強く、練習試合全勝のまま秋の大阪大会を優勝。
その後も無敗を貫き通してセンバツ大会へ突入し、そこでも決勝で負けるまでは無敗だったという。
自分達が去年戦った浪国とは別物だと。
「そのチーム相手におれが先発するのか…」
「信州学園より強いですかね?」

イガラシの言葉に谷口は、
「あたり前だ。信州学園には申しわけないが数段上だろう」
と、答える。
するとイガラシが、
「この世の中に……信州学園より強いとこなんてあるんですかね?」
と、返し、谷口や周りにいたみんなが驚きの表情を浮かべるが、
「いやすいません……。ちょっと今自信をなくしてるかも…」
と、イガラシはすぐにあやまった。
それでも自分なんかが先発していいのかと尋ね、谷口も今年の浪国は勝てないとし、向こうはマンモスで自分達は小鹿みたいなものだし、どこまで通用するか腕試しすればいいと話す。
「谷口さんは勝とうと思って僕を指名してくれたんじゃないんですか?」
「4人ピッチャーがいて他の3人には悪いが…、確かにおれはイガラシのことを一番信頼している」
「でも……おれは弱いですよ」

弱気を隠せないイガラシに丸井が、
「あのねイガラシ……おれはね…有名人と戦えて幸せだな――って思ってる。ちょっとミーハーだけどさ」
と言うと、松川たちもその話に乗り、
「今TVつければ有名人出てんじゃね?」
と、加藤が部屋のテレビを付ける。

するとそこには浪国高校主将の角番太郎がファンに囲まれている映像が映っていた。
センバツで2ホーマー。
今大会でも1本打っており、太っていながらもその体型のマイナスポイントが全くないと話す丸井。
バッティングでは内角は腰が回るし対応力があり、守備のキャッチャーでも機敏な守備と強肩を持っており、まるでマンガのキャラクターみたいなとこからカドバンと呼ばれて人気が出たのだという。
今秋のドラフトでも指名確実と言われるほどの選手。
丸井はこんな有名人と戦えるんだから冥途の土産になると笑う。
「世の中は今大会カドバンが何本打つか? それが話題。かませ犬と割り切って有名人を拝みますか」
と、続けるイガラシに谷口は、それでいいとし、今度こそみんなで甲子園を楽しめばいいのだと話す。
「たとえカドバンにホームランを打たれても……終わってみればコッチが勝ってましたってこともあるかも」
と話すイガラシは、TVで見てるだけだがカドバンにも欠点があると言う。
「腰を開くのが異常に早い…」
「――結果、泳がされて凡退するケースも多いようなイメージ」

だと。
「あ! おれもそう思うわ。よし。それで行こ。タイミングを外して泳がせる」
その話に乗った丸井だが、少し考え込んだイガラシは、
「ダ、ダメだ」
「甲子園が怖い…。ショートを守ることくらいはできても…マウンドへ行くことは恐い」

と口にする。
その言葉に再び驚く谷口たち。
イガラシはこちらの調子がどんなに良くてもどんなに油断せずにやってもどうにもならなかったこともそうだが、あんなに強かった信州学園が8回まで実力を出せなかったことも、甲子園の不思議な力で封じられていたようだと言い、うまく言葉にできないけど深い何かを感じると言う。
「イガラシはどんな時も強気だが……繊細なとこも持ち合わせている」
「そういうとこ好きだよ。だからこそマウンドで大胆なピッチングができるんだな」
そう話した谷口はイガラシの浪国戦での先発はやめると決断し、そのかわりリリーフは覚悟してくれと伝え、頭を切り替えて明日は浪国の練習を見に行こうという。

翌日。
2時間かけてやってきた山奥のグラウンド。
大山高校以上に気合いの入った声出しが響く中、浪国高校が練習を行っている。
「カドバンはどこに居る?」
谷口の言葉に双眼鏡でカドバンを探す丸井。
遠くからでも体型ですぐにわかるその存在感。
半田の調べによるとカドバンは、春のセンバツでは5試合で17の9。
5割2分9厘。
2ホーマー。
今大会では2試合で7の2。
2割8分5厘。
1本ホームランを打ったが、まだエンジンがかかってるとは言えないという。
「カドバンは注目されたことにより研究された。それで打率が思ったほど上がらないのか?」
と口にする谷口。
イガラシは
(欠点はあるんだよ)
(うまく攻めれば抑えられるかも…)

と考えながら、ケージに入ったカドバンのバッティング練習を見つめる。
1人10スイングずつ行う練習で、カドバンは1球目からサク越えを連発していく。
5スイングで5本のサク越え。
「うわ~こりゃプロだプロ」
「力があるだけじゃ入らない」
「きれいにミートする」

と、それぞれが驚きの声をあげる。
そのバッティングの凄さにイガラシも、
(うう……「穴がある」ってカンジでもないのか?)
と、先ほどまでとは違って戸惑いの色を浮かべる。
その後も
「いくらバッティングピッチャーのタマとはいえ、ここまで完璧に打てるもんじゃない」
と、松川が口にするほどのバッティングで、ついに10スイング全てサク越えをしてみせた。
(想像していたものと……全然違う……)
そう感じるイガラシ。

ここで第105話が終了となります。

感想

信州学園戦直後とあって、前回ラストから続いて自信喪失中のイガラシ。
単純な実力差だけではなく、本人も言う「うまく言葉にできない何か」に戸惑っている感じでしょうか。

次回は
一方のエースはツッパリのアイツ!
『ザッピング』の巻

次回も引き続き浪国の練習見学でしょうか。
そして昨年練習試合で戦った時とは別チームとなった浪国高校。
今回は主砲カドバンがメインに描かれていましたが、チーム全体として去年からどれほど変わったのかも気になるし、実際に彼らの力を見ることでイガラシの気持ちの変化も気になるとこです。

関連リンク

・第101話「精神の野球! 心の野球! の巻」
・第102話「勝負は下駄を履くまでは…の巻」
・第103話「甲子園のアレの巻」
・第104話「サヨナラ投手の巻」
・第105話「自信をなくした男の巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ

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26 Thoughts on “「キャプテン2」第105話感想

  1. 匿名 on 2025年3月11日 at 7:32 PM said:

    今回の感想ではありませんが単行本を購入したので大山戦を読み返していたのですが…二塁ランナーからのサイン、出てましたね…笑(既出でしたらごめんなさい)
    ランナーの手の形が全然違いました…

    • ちゃんと手で二塁からサイン送っている表現されてたんですね~。
      読んでいた時はそこまで見ていなかったので、コメントいただいてあらためて確認してなるほどと思いましたw

  2. けい on 2025年3月9日 at 9:36 PM said:

    初コメです
    あのキャラっていうのでてっきり西の雄、和合中学のメンツがでてくるのかと期待しましたが全然ちがいましたね。
    中学時代のライバルももう少し出してほしいなと思います。

    • けいさん、コメントありがとうございます!

      私も少なくとも過去に墨高か墨二時代に誰かと因縁あるキャラが登場するものだと思っていました笑
      かつてのライバルとの戦いも見てみたいですよね~。

  3. 匿名 on 2025年3月9日 at 2:08 AM said:

    次の試合が浪国戦という事で、プレイボール単行本2~3巻を引っぱり出して読み返してみましたが、この頃の谷口が竹バットに拘っていた事がよくわかります。
    そして、コージィ氏の絵のタッチが現在とはだいぶ違うのに気付きました。
    今でこそ、まるで、ちばあきお先生の「完コピ」のような絵になりましたが、当時はまだ発展途上段階?だったのでしょう。

    • そうそう、その竹バットで浪国監督とちょっと揉めたんですよねw
      浪国監督にとってあの練習試合は屈辱だっただろうから、今回第一声がどうなのか少し楽しみにしています。

      絵は今と比べると途中まではバラつきがあるなって感じがありましたね~。

  4. とのちゃん on 2025年3月8日 at 1:06 PM said:

    オールドファンとしては,あのイガラシが自信喪失なんて見たくないですね。中学時代の青葉学院戦の決勝ホームインなど、イガラシには無双の活躍を期待したいです。

    • イガラシといえばどんな時でも強気な態度と発言を見せてくれましたしね~。
      ここまで卑屈な彼は見た事ないし、浪国の練習見学から何かヒントを得て、自ら先発やるって言って欲しいなと思います。

  5. 匿名 on 2025年3月8日 at 9:58 AM said:

    3回戦で圧倒的な強敵を前に一人だけ見てる方向が違うのはかつての東実に本気で勝とうとした昔の谷口を思わせます。次回のツッパリ投手ってまさか南海の捕手だったりしますかね。カドバンで思い出したんですが岩鬼は裏金10万円で明訓に入学してました。裏金としては高いんでしょうか?

    • 田所キャプテン時代の東実戦前ですね~。懐かしい!
      今回も墨谷勢はほとんどみんなカドバンに圧倒されちゃってるし、負けて当然な感じの中で、信州学園戦でのショックが大きかったイガラシが逆に……って展開は面白そうですね~。

      裏金で10万円て私みたいな素人考えだと少なすぎる気もするんですがどうなんでしょうかw

  6.  hiroさん、いつもありがとうございます!

     久々に、キャラの立った人物が対戦相手となる印象です。
     作中の1979年甲子園大会というのは、ドカベン香川擁する浪商の活躍した年なので、作者にとって思い入れのあるキャラとチームなのだと思いました。
     ただ、ドカベンと言われたら、どうしても漫画作品の方の「ドカベン」を連想してしまうので、ますます谷口ら主人公側のキャラの存在が薄くなってしまわないか心配ですが……

     前もコメントしましたが、私はこの浪国戦が墨高最後の試合になると予想しています。今話、作者にとって思い入れの深いであろうキャラが出てきたことで、ますますその可能性が高くなったと感じました。
     どんな展開、どんな結末だろうと、最後まで見守りたいと思います。

    • 記憶さん、こちらこそいつもありがとうございます!

      見た目・あだ名共にやはりドカベンを思い浮かべてしまうので、まだ本格的な絡みもない現時点でインパクト強烈ですしね~。
      キャラとしてすでに墨谷勢を食っちゃってる印象も……。

      記憶さんの予想通りの展開になるとしたら、現墨高最後の相手として、浪国エースも牛島さんに寄せた性格から実力までカドバンに負けない個性放ってきそうですねぇ。

      この三回戦はイガラシの状態も含めて色々気になる事が多そうです。

  7. お疲れ様です。

    イガラシがあそこまで弱気になったのは青葉との再戦前くらいですかね?
    というか完全に拗ねているというか…
    谷原戦みたいにドンドン投手交代させればと思いますが。
    審判の印象が悪くなるかもですね(笑)

    浪国は皆さんの予想通り牛島・香川の浪商がモデルかと思います。
    しかし“カドバン”はなぁ(笑)
    悪意あるニックネームですよね。

    この時の浪商が出た甲子園なら、
    箕島高校が春夏連覇、
    箕島と星稜の18回延長戦とドラマティックな大会でした。

    墨谷がどんなドラマを作るんでしょうね。

    • SAWAさん、こちらこそいつもありがとうございます!

      イガラシの弱気はそこまで遡る感じですかね~。
      確かにちょっと卑屈になっちゃってる感じですね。
      ちょっと周囲も気を遣って大変みたいなw
      でも本体の負けん気から、浪国の練習見ていつもの調子取り戻してくれるといいのですが……。

      小刻みの投手交代いいと思うけど、実際審判や係員の印象に響きそうですよねぇ。

      カドバンはあまりにわかりやすかったですw

  8. 清貧一郎 on 2025年3月7日 at 5:19 PM said:

    こんにちは
    確かにプレイボール2の練習試合の時とは別チームの感じですね
    そのときは、補欠中心のメンバーだったせいかもしれません
    バッテリーは2人とも個性豊かそうなので、今後の話が楽しみです
    ところで監督は登場していないようですね
    交代して、別の人になったのでしょうか

    • 清貧一郎さん、こんにちは!

      浪国戦では相手バッテリーとの駆け引きみたいなものも楽しめそうですね~。
      カドバンの捕手としての実力やエースがどんな投手なのか次回でわかるかなぁ。

      まだ今回の練習風景の中にあの監督は一度も登場していないんですよねぇ。
      練習試合の回想ではがっつり映っていて、これで監督交代していたなんてオチまでつけていたら、むしろすごい監督だなと思ってしまいますw

  9. 匿名 on 2025年3月5日 at 4:14 PM said:

    更新お疲れ様です
    イガラシのダメージが想像以上に大きかったですね…井口がどう考えてるのかが気になります

    カドバンはドカベン香川さんが元ネタでしょうね となると投手は牛島さん…かな?

    • こちらこそコメントありがとうございます!

      そういえばバッテリー組んでた井口がどう考えているのか語られていませんね。
      確かに気になります……。

      あ~、だから次回予告が「エースはツッパリのアイツ!」って事でしょうか。
      楽しみになってきましたw

  10. 中ラマ on 2025年3月5日 at 12:07 PM said:

    いつも楽しみにしてます。

    イガラシのメンタルは深刻ですね。自身球は奔ってるのにあれだけ人打ち込まれたら落ち込むでしょうけど・・・
    次戦の先発は回避したほうがいいですね。プレッシャーを感じない近藤が先発と見ました。

    浪国高校の監督といえば、墨谷との練習試合で竹バットにクレームつけて意図的に全部折って墨谷に金属バットを使わせたせこい?おっさんですよね。

    名門なんだからもう少しおおらかに構えてもいいのではと思いましたよ。

    次回はまだ練習の見学ですか? 試合はどんな展開になるか楽しみでたまりません。

    • 中ラマさん、こちらこそいつもありがとうございます!

      イガラシが思った以上に悩んでいるというか混乱しているような感じでしたねぇ。
      甲子園の見えない何かに恐怖しているような……。

      そうそう、浪国の監督そんな事させてましたねw
      なんとなくちょっといやらしい関西風キャラを強調したようなキャラだったので、今回も何を仕掛けて来るか。

      たぶん次回も引き続き見学回かなと思っています。
      次回予告から浪国投手陣が見られるか楽しみです!

  11. まもる on 2025年3月5日 at 10:00 AM said:

    お疲れ様です、今回もありがとうございます。
    この話、谷口が初めて青葉学院の練習を見せに行ったとき、そして再試合前に青葉の特訓フィルムをみんなで見た時と同じですね。
    勝ち負けはわかりませんが、少なくとも我々が待ち望んだ、あきお先生が描いたようなキャプテン、墨谷ニ中のような好勝負が見られるんじゃないかと、ワクワクが止まりません。
    前回登場した、甲子園の魔物さんの力を使って善戦するもピッチャーが流石に捕まり打ち込まれ、そこをリリーフイガラシがマウンドへ。
    早く続きが読みたくて仕方ないです。

    • まもるさん、こちらこそいつもありがとうございます!

      言われてみるとまさに青葉の特訓フィルム見た時のような衝撃をカドバンから受けた感じでしょうか。
      たぶん次回は投手陣も見学しそうですが、そちらでもどんな凄い選手を見る事になるのか、今から気になっています。

      あとはイガラシがこの見学でどこまで気持ち持ち直すかも気になるなぁ。

  12. にしなさとる on 2025年3月5日 at 9:12 AM said:

    「あのキャラ」って、やはり角 番太郎のことなんでしょうか?「キャプテン」でも「プレイボール」でも、見た覚えがありませんが……。
    他の、ちばあきお作品で登場しているのかな?

    • 私も角番太郎はちょっと記憶にないです……。
      あのキャラってあったから過去に登場したキャラかと思っていたのですが、もしかして次回のツッパリも「エースはツッパリのアイツ!」だしどうなんでしょう?

      • にしなさとる on 2025年3月5日 at 6:56 PM said:

        そう言えば、宿屋でイガラシが、『カドバンは腰を開くのが異常に早い。あれなら泳ぎやすいはずだ』と思う場面が抜けていませんか?

        腰を開くのが早いということは、以前に内角攻めを喰らって、それに対応するためそうなったのでしょうか?

        • ご指摘ありがとうございます~!
          文章では書いてあったのですが、あらためてイガラシのセリフそのままに訂正してみました。

          内角攻めに対して自然と腰の開きを早くすることで対応するようになったのかな?
          それとも納得して自らそうしたのか……。

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