第43話「口の悪いやつらの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
谷原戦。
5回表を終えて10対0と墨谷が10点リード。
このまま5回裏が終わればコールドゲームとなり、さらに谷原は墨谷の先発井口に4回までパーフェクトに抑えられていた。
そしてこの回からマウンドに上がった近藤にも抑えられてすでに2アウト。
「パーフェクトで…コールド負けしたら…私は…私は……」
髪の毛も眉毛も白くさせた谷原監督が呟く。
次打者の若林が戻ってきた江島に近藤のボールを問う。
「ボールが上ずっているわけじゃない」
「アイツ狙って高めを投げ込んできている」
「わかっていてもボールがバットの上をすり抜けていく。つまり恐ろしく伸びてくるんだ!」
江島の話を聞いた若林が打席へ。
高めは捨てて腰から下だけを狙うよう心掛ける。
「おい近藤! 最後はおれんとこに打たせろよ!」
セカンドの丸井が声をかけると、内野も外野もそれぞれが自分のとこへ打たせろと声を挙げ始める。
そんな墨谷の様子を観客席から見守るコクガクイン大メンバーはチームに勢いがあると感じるが、肝心の近藤は、
「近藤~~~わかってんだろーな~~」
とセカンドから睨みを利かせる丸井に
(勢いってゆーより……圧力を感じますがな)
と少しびびりながら初球を投じる。
高めと判断した若林はこれを見逃すが判定はストライク。
(次も高めだったらどーしよう)
動揺する若林に2球目も恐れていた高めがくる。
(来た! この手だ!)
打席で姿勢を低くしてみせたが判定は今度もストライク。
「そんなせかいことするんじゃねぇ! バッチ! 堂々と行かんか!」
「2球で追い込まれちまったろー!」
「この次は喰らいついてゆけー!」
谷原ベンチから監督の檄が飛ぶ。
「喰らいつけ喰らいつけ! 喰らいつけ~~い!」
3球目。
またも高め。
(落ちつけ! このボールはカットすればいいんだ!)
当ててカットしようとしたが、打球は真上に高々とあがってしまう。
「はいはい。結局最後はおれでした」
余裕を見て捕球する井口。
「終った~~!」
谷原監督の叫び。
が、ボールがポロっとミットからこぼれてしまいファール。
「ヘイ! キャッチィ! このスットコドッコイが! てめぇ何年キャッチャーやってんだ!?」
丸井の怒鳴り声を合図に墨谷ナインから一斉に声が出る。
「ポロポロすんじゃねぇー!」
「ポケットキャッチなんかしやがってぇー!」
「おめぇはウドの大木かー!?」
「このスットコドッコイが!」
「中学からやり直せべらぼーめ!」
「いや小学生だ!」
「てめぇの母さんでべそだ!」
もはや叱咤激励でも何でもない悪口も入っているが、それを見ていた今野は若干引きながらも、この下町の容赦のなさがチームの一体感を表しており、この次元では満足していないのだと話す。
仕切り直しの4球目。
井口が出したカーブのサインに近藤が反応する。
(ん? なんか文句あるのか?)
(いや……最後もズバッと高めで空振りを取りたいと思ってたんで…)
(いいんだよこの配給で!)
そんなやりとりをしての4球目。
すぐに変化球が来たと気付く打者若林とベンチの谷原監督。
(バカめ! 若いバッテリーがッ!)
(今までさんざん高めを打ちあぐんでいたんだ。ここはストレートを続けられた方がイヤだったんだ)
「行けーいバッチ! 喰らいつけ!」
監督が再び叫ぶ。
(おれだって谷原のレギュラーなんだ! 喰らいつく!)
若林の喰らいついた打球はまたもキャッチャーへのフライ。
さっきよりも難しい打球。
そして不慣れな井口とあって谷原監督はまだ諦めなかったが井口がこれをダイビングキャッチ。
今度はボールをこぼさずにアウトとなった。
一斉にナインが井口の元へと駆け寄り、
「このバカヤロー! ナイスプレーしやがって!」
「おめぇは天才かっ!」
「ふざけるんじゃねぇ!」
と殴る蹴るのボコスカ状態。
ファインプレーが出れば全員で死ぬほどほめ讃えるに、コクガクイン大メンバーは今の墨谷の一体感をあらためて感じた。
こうして谷原戦は墨谷がコールド勝ちとなった。
ベンチ前でがっくり両膝をつく谷原監督。
(敵さん。すごいチームを作り上げた…)
(すごいチームを……!)
この試合の様子を移動中の車の中で聞いていた川北監督の田淵。
(意外と早く実現したな。川北対墨谷)
川北野球部が練習するグラウンドに到着すると、フェンス越しに練習を見守る倉橋の姿を発見。
「こんなとこまでどーしたい」
と田淵が声をかけると、
「川北対墨谷……できることなら当たってほしくなかったです」
と倉橋が話す。
お互い勝ち上がればどこかで当たる。
早いか遅いかの違いだと話す田淵だが、
「田淵さんに監督になるようにそそのかしてもらったのに、その谷口が今、田淵さんの前に立ちはだかるとは…」
と倉橋はなんとも申し訳なさそう。
勝負の世界だと気にした様子がない田淵を発見し、川北ナインが墨谷対谷原がどうなったか聞きに駆け寄ってきた。
「倉橋。今年のウチの連中を見てどーでぇ?」
田淵に聞かれて集まったナインを間近で見る倉橋。
(今年の川北は……見上げるような大男達ばかりなんだ)
とナインの体格の良さに呆然とした様子だった。
ここで第43話が終了となります。
結局墨谷の前に文字通り手も足も出ずに敗れ去った谷原。
谷原が弱いというわけではなく、墨谷がとんでもなくレベルアップしたって感じでしょうか。
谷原の監督もショックを受けながらも最後は墨谷を認めていたので、去年のようにトラウマとなって引きずるっていうよりは立ち直りは早そうかなとも思いました。
そして次の相手は田淵監督率いる川北商業。
去年とはまたガラリと面子が変わった様子なので、そのチーム力がどれほどなのかはわかりませんが、あの倉橋が見上げるくらいの大男揃いですから、墨谷ナインから見たらさらにでかく見えるんでしょうね。
今年の川北がどのようなチームとなったのか。
気になるところです。
・第39話「予選はじまる! の巻」
・第40話「強い体が強い打球を生むの巻」
・第41話「ナチュラルシュートの巻」
・第42話「去年と同じシチュエーションの巻」
・第43話「口の悪いやつらの巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ
先日言及した二次創作の中で、片瀬が、私の想像に近いタイプのピッチャーになっていました。
今後どう活躍するのか、それが楽しみです。
舐めてかかったり、パワーに自信の有る打者ほどしてやられる。そういうタイプの投手ですから。
ここでのネタバレは控えますが作者さんのキャプテンやプレイボールへの愛が感じられる作品だと思います。
現在ブログの方だと71話まで公開されていたと思いますが、タイトル通りもう一つの続編として楽しめますね~。
情報提供。もしかしてご存じかもしれませんが。
「ハーメルン」という小説投稿サイトで、「プレイボール」の二次創作の良いのが、一つ有りました。
https://syosetu.org/novel/246632/
こちらの作者さんとは以前に少しお話させていただく機会がありまして、私もお気に入りに入れて読ませてもらっています!
作中の「現時点」がいつなのか、はっきりしていなかったのですが、「プレイボール2」の第一話で、テレビに、ピンクレディーの「サウスポー」が写る場面が有りました。
ということは、その時点で、1978年の5月頃と見て間違いありません。
「サウスポー」が発表されたのが、1978年の3月でしたから。
つまり、物語の現時点は、その翌年、1979年の7月と確定したことになります。
なるほど~。
そういうとこからいつの時代なのか、さらに詳しい時期まで特定できるんですね。
ひとこと足りませんでした。
作中で、谷口の父親が、サウスポーを「新曲」と言っているので、1978年春に間違い無いことになります。
私は正直、墨谷はもう、川北と大島とは対戦しないと思っていました。
この2校に関しては、なんと言うか、『やり残したことが無い』感じだったので。
対戦するとしたら、谷原を除いて聖陵・東実・明善の3校だろうと。
聖陵については、モウちゃんこと大内と、広瀬のコンビ。その二人との決着が着いていない。
作夏の対戦で、墨谷にまともに打たれなかった投手は、モウちゃんだけでしたから。
スタミナの問題と、敗因だった投手守備が、どこまで改善されているか。
東実に関しては、佐野との最後の決着をどう着けるかが残っている。
明善については言うまでもなく、『まだ一度も勝てていないから』です。
東実は三年生となった佐野との勝負もあるので必ず対戦あるだろうなって感じですね。
川北に関しては谷口が監督になった経緯もあるから、なんとなく墨谷対川北というよりも谷口対田淵みたいな感じで対戦あるかなと思っていました。
聖陵もやはりおっしゃってるようにモウちゃんと広瀬をあのまま終わらせるかなという疑問もありましたし。
大島は正直ないかなぁと思っています。
チームとして大変身でも遂げてないとどこで出て来ても相手にならないような……。
明善は個人的に一番対戦が見たい相手なんですけど、また何らかの理由で当たらないかもって考えてしまいますね(笑)
もしかして前年の対戦順を逆にしているとか?
となると次に聖陵→大島工でラストが東実⁉︎
大島工がそこまで残っているとは思えないですけどね
それにしても川北は名門のはずなのに去年とチーム変わり過ぎでは(笑)
言われてみると谷原から川北とここまでは逆なんですね~。
おっしゃるように大島はそこまで残っているかかなり疑問ですけど、この通りならラストは東実ってとこまで綺麗に多くの予想と当てはまります。
川北はガラリと変わった印象でしたね(笑)
田淵監督の考えや方向性に何か変化もあったのかなぁ。
初めてコメ書き込みします。
川北高校戦もガタイの大きさで負けても墨谷が力負けしないチームに成長した展開であっさり終わる気がします。
長い試合展開はお花茶屋からかなと思います。
タカさん。コメントありがとうございます!
田淵監督も自信ありげな大男軍団の川北相手にパワーでもあっさり勝てたら、墨谷が行ってきた肉体改造計画が実を結んだ証明にもなりますね。
初戦から谷原にコールド勝ちしたこの大会は何が起こってもおかしくないと思います。
次あたりでお花茶屋の動向もわかったりするのかなぁ。
あれから情報ないからどれくらい実力付けたのか気になっています。
去年の秋季大会がかなり波乱だったような気がします。墨谷の一回戦負けや谷原がシード校でない。そして川北も2回戦であたるということはシード校でないと確定ですから。どの8校がシード校なのか気になります。
次の試合校川北の選手達の身体の大きさからパワー勝負になるのでしょうか?楽しみです。
3回戦はシード校登場なので墨谷が川北に勝ったとしてもまだお花茶屋とあたることはなさそうですね。
個人的には準々決勝でお花茶屋、準決勝で明善、決勝で東実だと嬉しいです。
確かに一回戦と二回戦の組み合わせを見るとそうなりますね……。
意外なところがシード校として出てくるんじゃないかという感じもします。
決勝は東実が盛り上がるだろうなと思います。
個人的にはやはり明善がどうしても気になってしまいます。
初めての対戦では負けたし、去年はすでにボロボロだったとは言え谷原に勝っていますからね~。
私も明善は気になります。運の強いチームのイメージがありますがボロボロの谷原とは言え23対0で大差で勝利できたのはかなりの実力がなければ出来ないですからね。今年は明善の真の強さを見たいです。
倉橋の立ち位置もなんだか微妙ですよね。もちろん墨高OBだから墨高側でしょうが、倉橋は野球浪人(?)してたころ川北に世話になってましたしね。川北も最大のライバルですが、佐野がまだ3年生なので、川北に勝って東実との決戦を実現して欲しいですね。
そうなんですよね~。
倉橋としては当然墨谷側ではあるんでしょうけど、過去お世話になった事や谷口監督就任の経緯とかもあってどっちも応援したいとこでしょうねぇ……。
決勝はやっぱり東実かなと感じますね。
勝ってこそいるけど東実入ってからの佐野を墨谷は打ち崩せてはいませんし。
川北高校とはいずれ戦うとは思いましたが、2回戦なので以外に早かった気がします。もちろん谷口を墨谷高の監督に勧めた田渕監督との因縁があるので流石に1回戦みたいな一方的な展開にはならないと思います。
倉橋は井口達後輩キャッチャーにアドバイスしてくれるかな?とは思いましたがそれがないのは学業に専念しているからでしょうね。この墨谷高対川北高は倉橋も球場に見に来て倉橋視点で試合は展開するかもです。
ただこれだけレベルアップしたからお花茶屋高校とは試合はないかも・・。流石にいくら練習試合をたっぷりしたとはいえ谷原高より強くなるとは思えないので
個人的に井口にこの試合後倉橋流のキャッチャーの極意を教えて欲しいですね。
私も川北はもう少しあとかなと思っていました。
1回戦が谷原で2回戦が川北とか、墨谷は今年も死のブロックですね(笑)。
久しぶりの登場だった倉橋ですが、川北戦を観戦するならどういう分析をするかも興味ありますね~。
今の墨谷は倉橋の目にどう映るのか……。
お花茶屋は今の墨谷相手だと確かになさそうかなぁ。
来年以降さらに力をつけてって感じでしょうか。