マンガ「悪役令嬢は無邪気に笑う。」の感想です。
王太子ラファエルの婚約者である公爵令嬢ティアは、ラファエルと生徒会メンバーに呼び出され、ラファエルが愛する男爵令嬢ソフィアに対する数々の嫌がらせに対する処分として退学処分を校長に進言すると宣告される。
さらには王太子の婚約者としてふさわしくないとし、自主的な婚約破棄もすすめられる。
生徒会メンバーはそれぞれが厳正な審査を通った将来国のトップを固める事が約束された面々であり、彼らを敵に回す事は学校だけではなく貴族社会でも破滅を意味した。
だが、それを聞いたティアはひとつため息をつき、容疑者の釈明として、彼らが挙げた悪事について一つずつ丁寧に反論していく。
・ソフィアの私物の破損
ティアは犯行時刻に自由時間だったからという理由だけ。
・女生徒を中心に蔓延しているソフィアの事実無根の悪評と直接的な侮辱と無視
目立った実績もないソフィアが生徒会のメンバーといつも時間を共有するのはおかしいし、ティアには口出しする権利はないが彼らの婚約者にはそれがある。
一度ソフィアに忠告したが聞く耳持たず。
婚約者に頼まれて話し合いの場に同席したがソフィアは逆に挑発。
これら正当性を挙げるティアに王太子は自分にも非があった点は認めつつも、自分はソフィアを愛しており、何者も害する事は許さないと断言。
自分の心がティアに向くことも金輪際ないと言い切る。
「それは私との婚約を正式に破棄してからおっしゃいませ」
と話すティアに王太子は、時がくれば国王の御印が押された文書を持って宣言してやると負けていない。
「さようですか。では私も明言させて頂きますわ」
「私は愛妾を許さない程狭量ではございません」
ティアはそれだけ言い残すとその場を去った。
ところが後日。
フォティ公爵邸に慌てた様子で王太子が駆けつける。
ティアは王太子との婚約を破棄し、カルバン帝国皇帝アルジャーノンに嫁ぐことを決めたという。
「だから何故!!」
大声で問う王太子にティアは、王宮で少しの間皇帝と一緒した際に気に入られたのだと嬉しそうに語る。
しかし王太子はここで納得するわけにはいかなかった。
後任の婚約者にソフィアを推挙したものの国王に認められず、どうしてもソフィアを妻にしたいのであれば王位継承権を返上するよう言われたらしい。
望んで王子になったのではないと話す王太子に、
「ならさっさと返上なされば?」
と冷めた視線を送るティア。
「結局殿下は愛妾を許すと言った私を娶って、王位も女も手に入れたかったと」
「浅はかだこと」
そこへ突然怒鳴り込んできたのは鬼の形相のソフィア。
断罪のシーンで見せた純真な顔ではなく、もはや魔物でも憑いたかのような表情である。
どうしたのかと声をかける王太子にも
「さわんじゃないわよ!!」
とその手をバティンッとはねのける。
ティアが皇帝の正妃となる事が納得いかないらしく、ティアが皇帝からもらった髪飾りを見て、
「それはあのイベントの…!! 返しなさいよ泥棒女!!」
「それはヒロインの私がアルジャーノン様のご寵愛の証として戴くものよ!?」
ともう止まらない。
ソフィアが寵愛を求めているのは王太子なのではないのかと問うティアだが、
「そんなわけないでしょ!? あんなのアルジャーノン様に逢う為だけの単なる道具よ!!」
「隠しキャラのアルジャーノン様に逢う為に、逆ハーエンドにしなきゃならないんだから!!」
もはや相手にするのも馬鹿馬鹿しいといった様子のティアの前で、ソフィアは周囲の者に取り押さえられる。
そして彼女の本心を聞いた王太子は愕然とその場に跪いた。
彼の前に歩み寄ったティアが囁く。
「…このような事私が言うべきでもないでしょうが」
「早急にソフィアさんとの関係を清算なさる事をおすすめいたします」
悪役令嬢の断罪シーンに始まり、彼女の反論で周囲は言い返せずもバカ男王太子だけは真実の愛を貫く。
そして悪役令嬢と王太子の立場逆転→ヒロイン本性現すという、見ていてスカっとする流れの典型的な作品。
短編だからさくっと読める点もこのマンガの魅力だと思います。
ティアは最初から最後まで上品かつ強気な姿勢を崩さず、実際ソフィアに対して彼女に一切の非はないと思われるが、その笑みや結末からは悪役令嬢という言葉がしっくりくる妖しさもある。
ソフィアも発言から彼女が異世界からの転生者である事は明白だが、そんな彼女の罠を華麗にすり抜けたティアもまた転生者って事でしょうか。
・「悪役令嬢は無邪気に笑う。」
・「婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフ」
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