第103話「甲子園のアレの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


信州学園戦。
9回裏2アウトからイガラシが5番山脇に2ランホームランを浴びて6対2。
「甲子園初マウンドが…ツーランホームラン」
「まいったねどうも…」

ショックを隠せないイガラシに、心配ないと声をかける部長。
だが、
(しかしバッター不利の判定の中でよく打ったな)
と、井口は警戒。

打席には6番住友。
初球空振りをとって1ストライク。
そのボールの威力に井口は
(しかしホント威力のあるボールなんだよ。これをよくあのバッター飛ばしたな…)
と感じつつ、住友の打つ気満々な様子もしっかり見ながらサインを出す。
2球目。
住友がバントの構えから3塁線へと転がす。
「だまされた!」
叫ぶ井口。
捕球しようとする鈴木とイガラシだったが、
「捕るな捕るな!」
切れそうな打球に井口が指示を出す。
が、打球は線上で止まってしまいフェア。
「チッ!」
舌打ちするイガラシ。

2アウト1塁となって打席には7番宮下。
初球。
宮下は見送る。
外角への際どいコースながら広いストライクゾーンのおかげもあり1ストライク。
(これか。ボール球を取ってくれた)
マウンドで感じるイガラシ。
2球目。
これまたボール臭いコースだが、井口はストライクを取ってくれると確信。
だが、これを宮下が打ち返し、ライト久保の前に落ちるヒットとなる。
2アウト1・2塁。
イガラシに交代してここまで信州学園にヒット5本を許す。
さらに8番伊藤にも初球を打ち返されると、打球はセカンドやや後方に落ちるライト前ヒットとなり2アウト満塁。
もはや声が出ないベンチの谷口たち。
「これはこれは……なかなか終わらなくなっちまいましたね」
「まあまあ…」
「これはアレかもしれませんぞ。久々に「これが甲子園!」ってヤツが視れるかもしれない…」

と係員たちが話す。

打席には9番山脇。
(信州学園が打っているボールは…限りなくボール臭い)
(いや完全に外れているのもあるだろう)

井口と谷口がそれぞれに感じる。
そしてイガラシのボールはけっして悪くないとも。
初球。
高めに外れていくボールをこれまた山脇が打ち返すと、ショート頭上を超えるレフト前ヒットとなり、ランナー1人帰って6対3。
湧き上がる3塁側信州学園応援スタンド。
「信州という土地柄はな…歴史的に…海がないから異国からの侵略を心配することがなかった。そのためのんびりとした県民性になったと思われる。攻撃的ではないのだ」
そう口にする信州学園の監督。
(だが実直にして勤勉! 芯は恐ろしく強い!)
「都会のもやしっ子には負けん!」

さらに続く打者もセンター前に落ちるヒットで6対4。
「こ「古豪」という言葉は…確かにその歴史は尊敬するが、現在の実力を”強豪”とは認めていない。ある意味揶揄している言い方なのかもしれない」
「だが信州学園をあなどっては困る…」

そう続ける信州学園監督。
「古豪には古豪の意味がある。それを愛でるのもまた甲子園の楽しみ」
と話す係員。

さらに森下もセンターへの打球を放つ。
(イガラシは弱くない。本当にいいボールを投げている)
(だから交代などという選択肢はなかった)
(そして試合前半で6点差がついたからと言って…ウチが気を緩めたわけじゃ決してない)

そう考える谷口。
「これを捕って終わりだ!」
叫ぶイガラシ。
しかしつっこんだ島田が打球を捕れず、カバーに入ってたレフト片瀬が捕球。
6対5となる。
「こ…これが甲子園に棲む魔物か…」
「恐ろしく強いハズのイガラシの上を…軽々と越えていく」
「9回ツーアウトがずっと終わらない」

半田が呟く。

ついに1点差まで詰め寄られた墨谷。
1点差まで追いついた信州学園の様子を長野県民がテレビで見守る。
「もうTV中継の時間がどうのこうの…ナイター照明代がどうのこうの……。審判のストライクゾーンがどうとか……。そんなもの全て超越した…。9時でも10時でもずっとやっとれや」
「それが甲子園…」

そう話す係員。
そして
(おれ達は……”甲子園”に負ける…)
腕組みしたままそう思う谷口だった。

ここで第103話が終了となります。

感想

9回裏2アウトからイガラシが打ち込まれて6点差がついに1点差まで追いつかれました。
けっして調子が悪いわけでもない今のイガラシがここまで打たれるってあたりに、甲子園の怖さを痛感させられました。
信州学園を止められる気配がないのですがどうなりますか。

次回、
イガラシはツーストライクまで追い込むが……
『サヨナラ投手』の巻

このまま墨谷は負けてしまうのでしょうか。
それとも1点差を守り切るのか。
次回読むのが少し恐いです。

関連リンク

・第99話「県民の想いの巻」
・第100話「TVを消した県民の巻」
・第101話「精神の野球! 心の野球! の巻」
・第102話「勝負は下駄を履くまでは…の巻」
・第103話「甲子園のアレの巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ

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28 Thoughts on “「キャプテン2」第103話感想

  1. 谷口君は頼むから「甲子園に負ける」なんて言わないでくれよ
    戦ってるのは対戦相手なんだよ

    • 谷口には負けるなんて考えて欲しくもないですしね~。
      気持ちとはいえ、最後の最後まで諦めない姿を見せて欲しいなぁ。

  2.  hiroさん、いつも丁寧なレビューありがとうございます。

     イガラシの”まいったね、どうも…”という台詞は原作の言い回しが再現されていて、2を読んで久しぶりに「おっ」と思いました。
     ただ、それ以外は……(苦笑)

     毎度のことですが、すごくもったいないと感じます。
     楽勝ムードから一点追い上げられるという展開自体は悪くないのに、何というか「話の筋をなぞっただけ」で終わっている。可変ストライクの話と同じく、甲子園の魔物という”甲子園あるある”を取り上げたいだけで、試合描写が深堀りされておらず、リアリティが感じられないんですよね。

     いくらでも描き方はあると思うんですよ。三回以降はパタッと抑えられて、登場人物に「なんか嫌だな」と言わせるとか。絶好のチャンスを相手のファインプレーで逸するとか。球場の観客全体が相手を応援する雰囲気になってくるとか。

     その辺、原作者のちばあきお先生は上手かったです。「相手がいい当たりをし出した」とか、「投手と相手打線の相性がいい」とか、「ナインの中で一人気をふさいだ者がいる(江田川戦の近藤)」とか、少ないコマ数でもちゃんと流れが悪くなる予兆を提示していたので、読んでいて違和感がありませんでした。

     別に「甲子園あるある」がダメと言いたいのではなく、やるなら丁寧に描いて欲しいと思うんです。面白くできる要素はあるのに、描き方が雑なせいで消化不良に終わっている。そこが歯がゆいんですよね……。

     追伸。”キャプテン世代”さんへ。厚かましいようで恐縮ですが、もしよろしければ、私の小説「続・プレイボール」読んでいただけたら嬉しいです。もちろん気が向いたらで結構です。よろしくお願いします。

    • 記憶さん、こんにちは!
      こちらこそコメントありがとうございます!

      私もイガラシのその台詞で同じ反応になりましたw

      確かに他の試合でもそこに至るまでの描写が省かれる事が多かったので、
      途中何か対策を練らなかったのかなとか指示出さなかったのかななど、どういう流れだったのか知りたい事は結構ありました。
      このあたりはやはり作者さんの違いが出るんでしょうね~……。

  3. 次回のタイトルがとても不穏ですがサヨナラ打になるような打球がベースや審判に当たり幸運にもアウトで勝利…という展開なら良いんですが…笑

    仮に勝利した場合は超強豪と当たりそうな気もします

    • 次回タイトルはどうしても悪い方に考えちゃいますよねぇw
      今回の話が墨谷にとって悪夢のような展開だっただけに……。

      一回戦、二回戦と対戦校の実力よりも時間との勝負みたいな感じだったので、三回戦進めたらそういう強豪とのガチ勝負なんかも見てみたいです!

  4. キャプテン世代 on 2025年2月9日 at 2:05 AM said:

    長期間、コメントせず恐れいります
    松川がベンチに下がり、近藤も試合に出ずベンチに居る。もしこのままサヨナラ負けするのなら、このメンバーで試合を終える気なのか?と腹立たしさが残ります。イガラシの変化球、井口のバッターが逃げるようなシュートやカーブ。近藤の三振狙いの高めへのストレート。。
    甲子園では1度たりともそれがない。。
    そして大会前のバッティングに特化した練習も、ハッキリ言って実ってない。。
    現に誰一人としてホームランを放って居ない。。
    この展開、有り得ません。。

    • キャプテン世代さん、お久しぶりです!
      コメントいただけるだけでありがたいのでお気になさらないで下さい!

      今回の流れのままにサヨナラ負けしてしまうと、甲子園初出場校が甲子園の魔物に飲み込まれてしまったという形になっちゃうのかなぁと思いますねぇ。
      それくらいただただ状況を見ているだけですし……。
      ここで踏ん張る事ができれば、甲子園の怖さを肌で感じたって事で今後のプラスにもなりそうですが、次回タイトル見るとどうしても悪い方に考えてしまいます……。

  5. 匿名 on 2025年2月7日 at 8:43 PM said:

    井口のリードが下手すぎますね
    ホームランが打たれた後なんですから
    ここはタイムを取ってピッチャーとよく話し合いをするべき状況でなぜ投げ急がせるのか
    それにこの状況だったらフォアボールは7回までならセーフなんですからストライクを取る必要なんてないはずです
    打ちに行っていることが明確な相手にはボール球というのはピッチングの基本です
    相手の立場になってみれば「ひどいクソボールでもストライクを取られるかもしれない」
    なんですからワンバウンドしない限りであればできる限りストライクゾーンから離れたボール球が好ましいのになんでストライクを取ろうとするのか
    あんなセーフティバントを許すようなコースに投げていいはずがありません
    私は監督であれば井口とイガラシを呼んで
    もっと状況をよく考えろと叱っているところですね

    谷口!もっとがんばれよ!

    • 全員が全員この状況に動揺しちゃってる感じですよねぇ。
      谷口もただただ言葉が出ない様子だし、井口や丸井も声かけてる様子ないし、全員甲子園の魔物に飲み込まれてしまっているような……。

      こんな場面だからこそ谷口には監督として頑張って欲しいとこですね~。

  6. イガラシのラーメン on 2025年2月7日 at 10:12 AM said:

    ここまで色々と甲子園ならではの要素を描いてきましたけど、ここに来て甲子園の魔物を出しますかw まあ墨谷もかつては地方予選でシードの東実相手にこういうミラクルを起こし、あと一歩のとこまで追い詰めた試合もありましたが、逆にやられるとこんな感じになっちゃうんですね。個人的にはベスト8くらいまでは勝ち進んでほしいんですけど。
    あと30数年ほど前でしたか、広島県の山陽高校が9回裏2アウトの3対0からひっくり返して4対3で勝利し、ミラクル山陽とか言われてた試合があったのをこの回を読んでて思い出しました。

    • 以前は強豪校相手に墨谷が終盤粘りに粘るって姿を何度も見てきたけど、相手にやられるとここまで怖いものなんだなと感じさせられましたw
      今回は甲子園という舞台がさらにその得体の知れなさを倍増させてる気が……。

      リアルでも野球ってほんとゲームセットまで何が起こるかわかりませんもんねぇ。
      おっしゃってる山陽高校の9回裏2アウトからの逆転なんて、見る者からしたらまさに奇跡だったんだろうなぁ。

  7. しん on 2025年2月6日 at 11:25 PM said:

    こんばんは。いつもありがとうございます。
    自分も次回タイトルは今大会甲子園に限ってはイガラシが投手断念なのかなと、そういったやり取りが描かれるのかなと予想しました。
    やはりこのままイガラシで打ち込まれて負けるというのは墨谷二中時代からのイメージからしても想像出来ません。
    せっかく鈴木も出てることだしw
    それに今大会相手に対して野球そのもので駆け引きなり、打ちあぐねた投手を攻略して勝ったというのでもなく、仮に負けるのが『甲子園に負ける』?えっ?何か釈然としませんね。
    願わくばもっと熱戦を見たいですね。
    決勝まで行ってOBも総登場みたいなw

    • しんさん、こんにちは!
      こちらこそいつもコメントありがとうございます!

      なるほど。
      しんさんもイガラシが投手をやめるのでは? という予想ですか。
      そう考えると次回タイトルのサヨナラ投手という表現も、もし墨谷が負ける場合あまりにストレートすぎる表現な気がしてきました。
      そう思わせて実はイガラシが……ってのはありそうだなぁ。

      私もできれば中山や山本ら墨高OBを見てみたいですw

      • しん on 2025年2月9日 at 2:35 AM said:

        普通サヨナラ試合の場合、言葉としてサヨナラ勝ち、サヨナラ負け、サヨナラヒットもしくはサヨナラホームランは馴染みある言葉ですよね。もっとストレートに今回で敗退の表現するならホントにさよなら甲子園wとか。
        それがさよなら『投手』というのがね。はて?と思うんですよね。そういう意味でも次回怖いながらも凄く楽しみです。
        もしただのさよなら負けなら墨谷ナインや谷口監督と共に自分も呆然ですねw

        • 言われてみるまでサヨナラってのを単純にサヨナラ負けに繋げて考えていたけど、ほんとこうやって並べて考えてみると、あらためてその意味を考えさせられますね~。
          実際次回予告としてそんなストレートにネタバレするかなってのもありますしw

  8. 匿名 on 2025年2月6日 at 6:51 PM said:

    キャプテンでの北戸戦の近藤みたいにギリギリで耐えてほしいけど次号が怖くなるタイトルですね

    • そうなんですよねぇ。
      次回タイトルで怖くなっちゃうんです……。
      谷口が三回戦意識し始めたのが負けフラグだったのかなとか色々考えてしまいます。

  9. 男岩鬼 on 2025年2月6日 at 6:10 PM said:

    初めましていつも楽しみにしています。
    次回タイトルがが不穏ですが、イガラシは昔から球が軽いって言われてるので、この試合以降ピッチャーをやめて打者に専念すると言うサヨナラじゃないかなと推測しました。

    • 男岩鬼さん、はじめまして!
      コメントありがとうございます!

      なるほど。
      そういう意味でのサヨナラ投手という次回タイトルであれば、まだ墨谷勝利の可能性に希望持てますね~。
      イガラシが投手諦めるのもそれはそれで寂しいけど……。

  10. 清貧一郎 on 2025年2月6日 at 10:12 AM said:

    こんにちは
    「次回は怖くて読めない」と思ってしまう話が続いてますね
    でも不思議に読んでしまうんです
    これが「怖いもの見たさ」なのでしょうか
    こう考えると話の組み立てがうまいと言えるかもしれません

    • 清貧一郎さん、こんにちは!

      最初はすんなり終わるかなと思っていただけにドキドキが続いていますね~。
      そう言われると次回をここまで気にさせられるっていうのはそういうことなのかな……?

  11. にしなさとる on 2025年2月5日 at 8:56 AM said:

    イガラシも谷口も、なぜこうなったのかわけが解らず、困惑していますが……。
    私には、イガラシが途中から一本調子になっているように、しかも投げ急いでいるように見えます。
    私が谷口なら、バッテリーをベンチに呼んで、まずそのことを指摘しますね。そして……。
    『投球の組み立てを変えて、変化球主体の軟投にしろ』と、加えて『こうなったら結果を恐れず、開き直って投げろ』と指示します。

    • バッテリーも谷口もただただ困惑したまま何もできずに投げて打たれて……って感じでしょうか。
      そういえばここまで谷口からバッテリーへの指示なども全然ないですねぇ。
      谷口も困惑してしまってるのでその余裕がないのかもしれませんが……。

      • にしなさとる on 2025年2月5日 at 4:41 PM said:

        知っている人も多いと思いますが、こういう状況に陥ると、その時の当人たちには何も解らず、後になってようやく気づくことが多いのです。

  12. まもる on 2025年2月5日 at 2:17 AM said:

    お久しぶりです、今回もお疲れ様ですm(_ _)m
    まさかまさかの展開ですね、イガラシがツーランまではまあ出会い頭の御愛嬌として、こんな打たれるとは、、、あってはならない展開、でもイガラシなら、墨谷ナインならきっと乗り越えてくれると信じて次号を待ちます!

    • まもるさん、お久しぶりです!

      私も2ランまではまぁまぁって感じで思っていたのですが、その後イガラシが容赦ないメッタ打ちに遭うのはびっくりしました。
      1点差。
      次回読むの怖いけどここで踏ん張ってくれると信じたいです!

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