第70話「バケモノの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


明善対お花茶屋戦。
延長11回裏お花茶屋の攻撃は2アウト1・2塁。
1塁ランナーの転倒を見たピッチャーがファーストへ送球すると同時に3塁ランナーがスタートを切る。
すぐさまファーストからバックホームされるがセーフとなってお花茶屋がサヨナラ勝ちをおさめた。
決勝は墨谷対お花茶屋の都立高同士の戦いとなる。
沸き上がるお花茶屋スタンド。
記者席ではこの結果に驚きの声があがる。
墨谷は一昨年がベスト8で昨年はベスト4。
お花茶屋は穴場中の穴場。
順当に行けば墨谷だが、ここまで来ると奇跡が起こるような気もしてきたと口にする記者たちは、それだけの勢いをお花茶屋に感じていた。

翌日。
集英予備校の教室ではリカとサチ子。
そして隣りの小学館予備校ではお花茶屋予備校OBの2人が、それぞれ窓の外を眺めて、
「なんでこんなことになっちゃったの…?」
「おい。どうしてこんなことになっちまったんだ?」

とこぼしている。
準決勝までは比較的クジ運が良かったから勝てたが、まさか昨年甲子園に行った明善を倒すとは思っていなかったOB2人。
そこへ講師がやって来て、OB2人が神宮だけではなく母校のグラウンドまで行って練習の手伝いをしており、そんな状態でまともに勉強できるのか。
もしこれでお花茶屋が甲子園まで行ったらどうするつもりなのか心配した様子で話す。
講師はOB2人の気持ちを理解しつつも、甲子園行きが決まったあとは東京から応援して欲しいと願った。

そこへ谷口が教室に入って来る。
すると講師はOB2人を帰して、今度は谷口と話し始める。
「アイツらには悪いが…この2チームの決勝になった以上…墨谷の100%勝利だろう」
と話す講師。
そうなると谷口の8月は甲子園大会で大変な事になる。
予備校の担当としては開会式直後の第一試合で負けて帰って来てほしいという。
母校で野球部監督をやっている浪人生を受け入れてほしいと言われた時は驚いたが、それ以上に谷口の頑張りにはもっと驚いたと講師は続ける。
こんなことをやりながら成績をしっかり伸ばす谷口に予備校上層部が期待するのもわかると。
谷口は本来勉学に生きる人生ではなく、受験テクニックに長けた生徒とも思えない。
むしろ受験に向いていないタイプでだと言い、
「予備校の講師としては不適切だが……言葉を選ばずに言えば…君はある意味バケモノだ」
と話した。
予備校を出たところで前方にはお花茶屋OB2人にリカとサチ子。
リカとサチ子は谷口に気付いたものの、父親や商店街の人達の盛り上がりを思い出し、もう墨谷を応援できないと谷口に声をかけられなかった。

その頃墨高の校長室。
「し、しかし……谷口という男はなんという男なのだ?」
「谷口とは……こういう男です」

問いかける校長と答える部長。
だが、校長の心配は決勝戦ではなくその先の甲子園にあった。
選手たちの甲子園までの旅費や滞在費。
生徒や学校関係者、地元の人達といった応援団を運ぶ経費。
それらにかかる経費一千万をこれから半月ほどでどう集めればいいのか。
「ウチは部活のひとつで野球をやっとるだけだ! こんな大事業は想定していない!」
そう嘆く校長の姿に、
(甲子園に乗り込もうって学校の校長がなんという冷めた視線)
と思いつつも、その通りだと考える部長もまたこれから先に大きな不安を抱いていた。

こちらは河川敷には丸井とイガラシの姿があった。
「まさか……まさかおれ達お花茶屋に負けちゃったりして」
と話す丸井に何を言い出すのかと驚くイガラシ。
甲子園には行きたいとしながらも、もしそうなれば約一ヶ月間、受験生にとって最も大事な夏を谷口から奪う事になる。
それを心配する丸井は
「イガラシ……もし甲子園に行けたとしても1回戦で負けて帰ってこねぇか」
と言い出した。
そんな丸井に
(丸井さん……この人はそこまで谷口さんのことを……)
と思うイガラシ。
丸井はさらに続ける。
「甲子園は勝つことに意義があるんじゃねぇ。出場(で)ることに意義があるんだ」
「甲子園は…オマケだよ…」

と。

一方、田所電機商会では田所と倉橋が客のいない店内で座って話をしている。
田所もまた高校球児にとって甲子園は冷静に考えればオマケだとし、全国の球児の99%は地方予選で終わる。
自分たちの後輩はその99%の中で全ての試合を全うすることになる。
そのオマケにまで到達しなくても十分な実績を残した事になるよなと話す田所に、
「オマケに到達しなくてもいい――と?」
と尋ねる倉橋。
「予防線を張るわけじゃねぇんだよ」
という田所だが、みんなが勝利を信じ切ってる世界で悪い予感しかしないという。
それはまた倉橋も全く同じ気持ちだとし、
「これはヤバイ」
と不安を口にするのだった。

そしてお花茶屋高校では監督が、谷口が現れた日の事を思い出していた。
興味半分で
「ちょっと打ってみせてよ」
とお願いしたところが、お花茶屋の選手たちよりも1段階どころか3段階位レベルの違うバッティングを見せつけられた。
それはもはや選手たちに刺激を与えるとかいうレベルではなかったものの、お花茶屋の選手たちは負けん気が強く何より賢い。
(そうか。うまい人ってこうゆう風に打つのか)
と目から学習し漠然とだが、
(いつの日かこういう人と戦ってみたい)
と思うようになった。
それは監督自身もだという。
(太刀打ちできないのはわかっているが、いつかこの男と闘ってみたい)
あの谷口が現れた日のことがどこかで原動力になっているのだと。
「夢が叶ったのだ!」

ここで第70話が終了となります。

感想

やはりあのままお花茶屋の勝利となりました。
甲子園行きに関してはそれぞれが不安や心配を抱えているようですが、なんとなく校長の心配がリアルなだけにどう解決するんだろうって考えてしまいました。
丸井はやっぱり谷口の心配。
田所さんや倉橋はこの勝って当然な空気の中での危惧。
そんな周囲の雰囲気を谷口監督はどう感じているのか気になります。
今回谷口監督の台詞って、予備校の女子に(甲子園行きは)もう決まったも同然と声をかけられた時の
「ゴメン。そういう言い方は……ちょっと…」
という台詞しかなかったんですよねぇ。

次回は相木と今野が登場するようです。
どんな話になるのか。
楽しみです。

関連リンク

・第66話「がんばれ控え捕手の巻」
・第67話「ホームを死守するの巻」
・第68話「墨谷なんて忘れちめえの巻」
・第69話「お花茶屋のスコアの巻」
・第70話「バケモノの巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ

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18 Thoughts on “「キャプテン2」第70話感想

  1. 匿名 on 2023年9月24日 at 5:15 AM said:

    まぁ、考えてみたら墨谷二中の頃は地区予選~全国大会まで一貫して「高野台球場」で行われていたので、遠征旅費の心配などしなくても良かったのだろうけど、今回は関東圏→関西圏への移動となるので、このようなエピソードを盛り込んだのでしょうね。

    • あえてこの話を入れたという感じでしょうか。
      決勝戦、もしかしたら甲子園という状況での周囲のバタバタ感はよく伝わってくる感じですね~。

  2. 匿名 on 2023年9月23日 at 5:47 PM said:

    甲子園出場の経費については、別に学校の予算だけで賄う訳じゃありませんからね。
    出場ともなれば高野連からもお金が出るし、学校OBにも寄付金を募るし、もちろん地元住民も協力してくれるので、それだけでもかなりの金額になるはずです。
    コージィ先生は何も知らないようですね。
    それに、谷口の心配をするくらいなら、甲子園出場が決まった時点で監督を退任してもらえばいい。
    もともと監督なんて居なかったチームなんだし、丸井、イガラシ、井口、そして一年生ながら近藤と、キャプテン経験者が4人も居るような凄いチームなので、仮に甲子園で戦っても、いい戦いぶりが出来ると思います。
    そして何より引っかかったのが、丸井と田所(倉橋も同意)の甲子園に対する「オマケ発言」ですね。
    そのような気持ちで甲子園に行く学校があるのでしょうか?
    そんな選手が居るのでしょうか?
    甲子園に出場して一生懸命に戦う選手に対してものすごく失礼な発言ではないでしょうか。
    球場にはプロのスカウトだって有望な選手を視察に来ます。
    そういう選手にとっても絶好の自己アピールの場でもあり、野球をやめて一般社会で生きていくにしても、進学や就職で有利になる場合もあり、オマケだなんてとんでもない話です。

    最後に、まだ公式戦で対戦してもいないお花茶屋に対しても失礼ですね。
    墨谷の甲子園出場決定後のどうたらこうたらは、まず決勝でお花茶屋に勝ってからにしてほしいです。

    • 周囲が甲子園出場後を期待するのはまだわかるんだけど、丸井まで甲子園出場後の心配をしてるのはどうなのかなと思いました。
      ましてや谷口のために負けようとか、チームのキャプテンがそれ言っちゃったらダメだろうと……。

      周囲があれやこれやと落ち着きない状況で、今回ほぼ台詞のなかった谷口はどう考えているのか。
      次回でそれが聞けるのかなと期待しているんですけどどうなるでしょうねぇ。

  3. ごんた on 2023年9月22日 at 5:04 PM said:

     谷口君に気を使って1回戦で負けるくらいなら、谷口君にはお留守番してもらって、丸井なり五十嵐なり井口なりが指揮を執るのがよい。この3人だってかつては主将の経験がおありですから、特に五十嵐の野球センスと選手を見る目は谷口ですら目を見張るものがあります。てか今までは監督なしてやってたじゃん。1回戦でワザと負けるくらいならそれのがいいよ。甲子園への経費とかって地元から寄付金出ませんかね。支援したいって方もいらっしゃると思いますが。過去を見ても公立高校だって普通に甲子園行けてるわけだし、ちょっとわけわからんね。まあそういう心配は決勝で勝った後の話ですが。

     決勝ですが、あのお花茶屋とは・・・。自分個人としては明善が決勝と思ってましたが、なんか漫画みたいな話ですね(漫画ですが笑)。ここへきて急に強くなるのは現実離れしてますね。ただ、現代のハイレベルな時代では不可能だと思いますが、79年当時であれば少しは可能性はあるかな。手投げの打撃練習がメインの時代に、バッティングマシーン等の購入やさらに他の学校がやっていない効率の良い練習法を取り入れていけば少しは。

     

    • 自分のためにわざと1回戦で負けるなんて谷口が許さないでしょうしね~。
      せっかくまとまっていたチームの中でまた対立の構図みたいなのができちゃいそう……。

      結局決勝の相手は急成長のお花茶屋に決まったけど、やっぱり明善へのリベンジ果たして欲しかったって気持ちも強いんですよねぇ。
      めぐり合わせと言えばそれまでだけど、あの初めての対戦で負けて以降明善とは縁がないなぁ。

  4. ギブソン on 2023年9月21日 at 11:11 PM said:

    こんばんは。
    お花茶屋、やりましたね^_^恐らく作中では一度も負けていない明善に勝ってくれて爽快でした。
    墨谷に甲子園行って欲しいですが、決勝も良い試合を期待しています。丸井や田所達が心配するのはともかく、校長と予備校の先生が冷めたことを言っていましたが、谷口の勉強や遠征の予算は、後で何とかなるでしょう笑

    • こんにちは!
      お花茶屋勝ちましたね~。
      決勝戦がどんな展開になるのか予想もつかないですけど、ほんといい試合して欲しいなと思います。

      そして墨谷に甲子園行き決めて欲しいです!

  5. キャプテン世代 on 2023年9月21日 at 1:52 AM said:

    まさか?試合をこれ以上見せずに最終回を迎える??何だか主人公の墨谷ナインや谷口監督の言葉が余りにも少なかったこう言うパターンって最終回近い感じじゃないかな?元祖キャプテンと言い、、元祖プレイボールと言い、、
    嫌だこんな終わり方は嫌だ

    • ここまで相手のお花茶屋関連のエピソード描いておいて、墨谷との試合描写なしだったらさすがにまずい気が……。
      墨谷にとって初の甲子園への挑戦だし、決勝戦は丁寧に描いて欲しいなぁ。

  6. 丸井は愛すべきキャラなんですが、
    今回は呆れ返ってしまいました。

    甲子園は確定だけど、
    一回戦で負けよう

    なんて、あきお先生なら言わせませんよ。
    題名『キャプテン2』で現キャプテンなのに、
    相変わらず不遇でアホな丸井に同情します。

  7. にしなさとる on 2023年9月20日 at 10:33 AM said:

    墨谷高校校長の心配、実は的外れなんですよね。
    選手たちの甲子園までの交通費や滞在費は、実は高野連からすべて出るんです。

    応援団の方は、希望者だけを行かせれば良く、費用はその希望者に出させればいい。
    これなら、金の心配はそれほど無いと思われますが。

    • あら、そうなんですか。
      詳しくないのでそういう仕組みだと初めて知りました(笑)。

      となればお金の問題はクリアできそうだけど、やっぱりその前にお花茶屋戦がどんな試合になるのか気になっています!

      • にしなさとる on 2023年9月20日 at 4:34 PM said:

        墨谷高校が甲子園に行くなんて、3年前までは考えられないことだった。
        だから、校長も野球部長もこんな心配などしたこともなく、考えたことも無かった。
        そのせいで知らなかったのでしょうね。選手たちの甲子園行きの費用は、高野連から出ること。

    • イガラシのラーメン on 2023年9月20日 at 5:58 PM said:

      ウチの地元の私立高校は何度か甲子園へ出場してるんですが、甲子園出場を決めると全OBへ寄付の呼びかけが一斉に出回り、そういう感じで寄付金を募ってましたね。今なら資金難ならクラウドファンディングで支援金を募る手段もありますが、昭和の時代だとさてだどうするのか?まあこの辺キッチリやりそうなのがコージィ城倉さんらしいですねw

  8. お参り on 2023年9月20日 at 5:41 AM said:

    お疲れ様です。甲子園に行く為の資金の問題は昔、水島新司先生の球道くんでも描かれています。なんだかんだで主人公の中西球道所属の青田高校は貧しい学校だったが甲子園で試合しています。この問題を取り上げるのは墨谷が甲子園に出場する為に何か秘策があるかもしれないですね。強力な支援者が居るお花茶屋が勝ってしまえば話の展開が簡単すぎて面白みに欠けるので墨谷が勝って甲子園問題を如何にクリアするかを描く方が良いかと思いますが1つ間違えると去年の谷原の試合みたいにブーイング殺到になるかも知れないので慎重に話を進めてほしいです。

    • 今回は試合外で周囲の協力が色んな形であるのかなと思わせる流れですね~。
      個人的には今の谷口の気持ちを知りたいとこです。

      確かにここからの展開は丁寧に描いて欲しいなとも感じます。
      そして決勝戦も昨年の谷原戦みたいな終わり方は避けてほしいなぁ。

    • イガラシのラーメン on 2023年9月20日 at 5:50 PM said:

      ああ、懐かしいですね~ 球道くんの高校一年夏の甲子園へ行く時の話は、最終的には学校を潰して身売りしてでも野球部を甲子園へ行かせようという校長の決断のとこへ、高野連から電話がかかってきて費用が出るという話でしたっけ。

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