第29話「4人めの投手の巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


8回裏から墨谷のマウンドにあがったイガラシだがノーアウト満塁のピンチ。
続く打者の大きなライトフライに、中継に入った井口からの強烈な返球に本塁クロスプレイになるも3塁走者佐野はアウト。
その判定を不服に感じた佐野は
「手の方が早いです!」
「ミットの下に手が入ったんです!」
「セーフです! 絶対セーフです!」
と、主審に叫ぶも、慌てて東実監督がそれをやめるよう怒鳴りつけて渋々引き下がって行く。
完全にセーフのタイミングだったところをアウトにしたことに丸井は大喜びで井口をしばきまくる。
「やったやった!」
「わぁ~~暴力反対!」
「おっとイケネ。ここは衆人環視……」
慌てて叩くのを止めた丸井は入部したての頃、練習での中継プレイを適当に行っていた井口を思い出し、今のとっさの判断力と決断力、そして正確に抑えられた返球に、この3ヶ月での成長を実感するのだった。
そして谷口からの
「ナイス井口!」
との声に、井口自身もまたみんなに褒められたことを喜んでいた。

これで状況はツーアウト2・3塁。
谷口はマウンド上のイガラシに、守備が定位置に戻る事と思い切って行こうと声をかける。
しかし、イガラシは
(井口は……誰から見ても著しい成長を感じさせる)
(そこに行くとおれは……)
と、なんとも複雑な感情を抱いていた。
一方、ベンチに引き下がった佐野もイガラシがこの回だけでマウンドを降りると読んで焦っていた。
(おそらく9回は谷口投手……逆転するとしたらこの回なんだ)
(イガラシのボールは軽い! 金属バットのスイングの前ではこのボールは弱いハズなんだ)
イガラシをショートから見つめる谷口もまた、高校生になったイガラシに壁があるとしたら、それは『体の小ささ』だと感じていた。
自分よりはるかにデカイ体躯のレベルの高い打者が金属バットを振り回した場合、体力の差が打球の質に表れる。
元々体のデカイ井口の方がこの問題を乗り越えていくのだと。
(ここは2塁ランナーのリードを多少許しても…深めに守ってみるか…)
あえて定位置より若干下がる谷口。

迎えた3番打者の打球は強烈なゴロとなってイガラシの左を抜けていく。
センター前に抜けるかと思われたが、深めに守っていたショート谷口が横っ飛びでなんとか捕球。
しかしこの体勢からではアウトにできない。
そう思われたが、セカンド丸井がカバーに入って谷口からボールを受け取りファーストへと送球。
またも際どいタイミングだったが判定はアウト。
墨谷の固い守りに
(予想以上に…ものすごく鍛えられている…)
(こんなたった1点が追いつかん……!)
と、東実監督も愕然とする。

大きなピンチを乗り切ってベンチに戻った墨谷ナイン。
「しかし谷口さんと丸井さんのコンビはかっこいいですね~」
隣りに座る丸井に井口が声をかける。
『谷口さんと丸井さんのコンビ』
その響きのあまりの嬉しさに、にま~~っと表情の崩れる丸井がにやけ顔のまま井口の頭を思いっきりはたく。
「上級生に取り入るんじゃないよ…口のうまい奴嫌いよ…」
そうは言いつつも表情は崩れっぱなしの丸井と、なぜ叩かれたのか理解できない井口の
(はあ~~ん!?)
という心の中の絶叫。
墨谷ベンチではそんな漫才が繰り広げられていたが、マウンド上の佐野は1点を追いつけないこの展開に
(こうなってくると……去年の秋の大会の悪夢が蘇ってくる)
と、イヤな気分を抱き、あの時も1対0の「スミ1」という、今と同じ展開で負けた事を思い出していた。

9回のマウンドに備えてイガラシにキャッチボールの相手を頼む谷口。
「イガラシ。今日のピッチング、何か不満でも感じているのか?」
「それは……キャプテンも感じているんじゃありませんか?」
そんなやり取りをしつつキャッチボールするが、谷口は気にする必要はないとイガラシに返す。
東実がこちらの守備隊形の裏をかいてヒッティングに来ただけであり、そうじゃなければ「内野ゴロ」2つと「外野フライ」でチェンジだったと。
だが、当然イガラシは納得しない。
(ものは言いよう――か)
(向こうの奇襲がなかったら……とりあえずキャプテンの慰めを信じてみるか)
そうこうしている間に墨谷の9回の攻撃はあっさりスリーアウト。

9回裏から墨谷のマウンドに上がった谷口を東実ナインが見つめる。
「とうとう谷口か」
「去年ウチはこのピッチャーに完封された」
「だから今日本来はコイツが先発してきても良かった」
そう話す東実監督は、今年はその谷口の下級生達に完封されている事になんとも恨めしそうな表情を浮かべる。
「谷口。とうとうここまできたな」
マウンドに歩み寄って谷口に声をかける倉橋。
谷口自身はこの試合、4イニングス、下手をすれば5イニングス行くことも覚悟していたらしく、井口+松川+イガラシの継投で8回まで無失点で来るとは思っていなかったらしい。
5イニングス覚悟していたところが1イニングスに全力注入できる。
この状況をありがたいと話す谷口。
それを見守るスタンドの田所もまた、リードしたまま4人目のピッチャーである谷口の登板に
「谷口の考えた野球がここまでは大成功している――ということ」
だと考えていた。

9回裏。
東実の攻撃は4番から。
(イガラシ……おれのボールだって…球質は軽い方だ)
(でも軽いピッチャーだって…やりようはある!)
(見てろ……!)
ショートを守るイガラシに心の中で呟きながら初球を投じる谷口。
そしてその初球を待つ倉橋の
(「投手4人制」に懐疑的だったおれ……)
(だが――東実相手に継投という形でここまでゲームを作った。負けたぜ谷口。あと一歩だ!)
という心の声で、第29話は終了となる。

感想

自分が登板した途端に招いたピンチを同級生の井口が救った事で、より成長差を感じてしまうイガラシ。
そんなイガラシにできた目の前の壁を自らのピッチングで乗り越えられるものだと見せようとする谷口。
4番から始まる東実の攻撃を、イガラシ同様に球質が軽い谷口がどのように抑えるのか。

イガラシのためにもここはスムーズに抑えて欲しいと思うけど、東実そして佐野にこのまま終わって欲しくないという複雑な気持ちも抱いちゃいますね。

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4 Thoughts on “「プレイボール2」第29話感想

  1. チープ on 2018年7月11日 at 7:31 PM said:

    違和感もあるけど面白くないわけではなく毎回、次回を楽しみにしてます。土台、他人の作品の続編を書くのが無理あるのですから。佐野、東実監督のキャラの描き方はすごいの一言です。

    • 最初の頃はどうしても長年読み慣れたちばあきお先生の描いた世界との違いに目がいってしまいました。
      けど、おっしゃるように別人が続編を描く事自体に無理がある中で、最近はコージィ城倉先生の描くプレイボールがしっかり印象づけられるようになった気がします。

      かつて対戦した他の高校もどう描かれるのか。
      今から楽しみです。

  2. チープ on 2018年7月10日 at 8:35 PM said:

    久しぶりです。金属バットが猛威をはらいだしたのは攻めダルマ蔦さんの池田からと思うので、ちょっと違和感はあるんですけどねー

    • お久しぶりですー。

      蔦文也さんのエピソード、今さらながらに拝見しました。
      勉強になります!

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