第97話「ハリーワップの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
大山高校との試合は2点先制されての5回裏、墨谷が一挙8得点して逆転して8対2。
時刻は夕方6時となった。
球審が係員席を見る。
「大山はどんどん打って反撃して行けよ!」
甲子園の係員から声が飛ぶ。
そんな中、6回表大山の攻撃は7番駒井から。
倉部監督が駒井を呼び、6点差を追いかけるためにもランナーを溜めようと指示。
前の回のようにボンボン打っていかず、
「できるだけ粘って”タマ数”を投げさす……」
と指示していると球審から
「大山高校ハリーアップ!」
との声。
駒井が慌てて打席に入る。
墨谷のマウンドは5回途中から代わった二番手井口。
初球。
外角ストレートを
(外れてる)
と見た駒井は見送るがストライク。
「お。取ってくれた」
これには井口も意外そうな声を挙げる。
2球目。
今度は外への変化球。
(変化球……これは外れてる)
見送る駒井。
受けたキャッチャー萩原も
(外れた)
と思ったが判定はこれまたストライク。
萩原と駒井二人が同時に
(え)
という反応。
「お。これも取ってくれた」
そして井口の反応。
動揺した駒井はタイムを取る。
(ボール球をストライクと判定されて追い込まれちまった)
(まずい)
気持ちの整理がつかないままに、
「ハリーアップ!」
再び球審からの注意で慌てて打席へ。
この様子に倉部監督も言葉が出ない。
3球目。
これまた際どいコースへ来た球を
(これもボールっぽいが際どい。また球審に手を挙げられる)
(手を出さなくちゃ!)
と思った駒井はヒッティング。
思いっきりひっかけた打球はサード正面のゴロとなって1アウト。
「おいどうだった? 審判の判定」
ベンチに戻って来る駒井に倉部監督が尋ねる。
駒井はボールだと思った球をストライクと判定されたと話すが、どっちとも取れる球でもあったといい、それでボール臭い球に手を出したのだと倉部監督も察する。
「いやまあ……カットしてファールにできれば良かったんですが……」
そう話す駒井だが倉部監督は言葉が出ない。
粘ってランナーを溜めたいのに溜められない。
この状況を想像はしていたようだが思っていたよりも早くそうなったらしい。
打席には8番対馬。
ここでも初球低めを見送るもストライクとの判定。
2球目は完全な高めのボール球をハーフスイングを取られてストライク。
(これがハーフスイングって…!)
(あれでハーフスイングを取られたか…)
打席の対馬もベンチの倉部監督も驚きの判定。
そして3球目を引っかけるとこれもサード正面のゴロとなって2アウト。
(またまたボール臭いとこに手を出してサードゴロ!)
(もうひとつの「第4試合の恐怖」!)
(甲子園はナイターの試合が長くなるとひんしゅく…)
愕然とする倉部監督。
甲子園は朝8時に第1試合を開始。
全ての試合が2時間以内で消化できればインターバルを入れても夕方6時には切り上げられる。
つまり照明を焚かなくても済む。
が、この試合は6時で6回。
このままだと試合終了は7時を回る可能性がある。
必然的に球審のストライクゾーンが広くなるのだと考える。
試合テンポを急かされているかもしれないこの状況ではランナーを溜めるどころではないと倉部監督も焦りを見せる。
そんな倉部監督が恐れるとおり、9番奥田も初球から際どいコースをストライクと判定され、
(見極めるどこじゃない! 打たなくちゃ!)
と焦って2球目を引っかける。
結局ショート正面のゴロとなって3アウトチェンジ。
6回裏。
墨谷の攻撃は3番井口から。
大山二番手三村の初球。
際どいとこを見送りストライク。
2球目もボール臭いコースだったが見送ってストライク。
そして3球目も外角へのボールをストライクと判定されて三振。
「うわッ。ストライクゾーンが広がりました。どんどん取ってきます」
「まあおれのボールも取ってくれたんでお相子ですが」
と、ベンチに戻って伝える井口。
「うむ。ベンチから見ててもわかったぞ」
と、こちらは特に慌てた様子もない谷口。
(審判は平等…――か)
結局ここから試合は全く動かなくなり、7回と8回両チームともに無得点のまま進む。
「いいとか悪いとかの問題じゃない」
「甲子園大会には…甲子園大会の野球がある!」
「それが倉部監督から教わったこと!」
「そしてあの人の勝負に対する執念…!」
「色々と知ってみると甲子園大会って面白いです! 部長」
谷口がそう話す中、9回表も無失点に抑えた墨谷が一回戦突破を決めた。
ここで第97話が終了となります。
前回墨谷大量得点から一気に大山が崩れるかと思いましたが、それ以前に急かされて自分達の野球ができずに終わった感じでしょうか。
倉部監督はこの状況を想定はしていたようだけど結局何もできないままになっちゃいましたね。
時間の問題なければあそこから大山がどう粘るのかも見てみたかった気はしますが……。
何にしても墨谷一回戦突破ですね。
次回は
甲子園には、いろんなチームが出て来ている。
『客観的に考えれば』の巻
二回戦の相手が気になるところです。
・第93話「3度めの対決の巻」
・第94話「上級生のプレッシャーを背負ってくれたの巻」
・第95話「目が慣れる頃の巻」
・第96話「部長の功績?の巻」
・第97話「ハリーアップの巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ
・キャプテン2(13)
・キャプテン(1)
・プレイボール2(1)
・プレイボール(1)
ゲーム子様、ご無沙汰しております。いつも丁寧で分かりやすいレビューに、感服致します。
今話のように、審判による恣意的な可変ストライクゾーンがあるのかどうか私も分かりませんが、確かに大差のついた試合終盤、審判がストライクを広めに取るようになった”気がする”のは、甲子園あるあるだと思います。
さて私事ですが、ブログ名を「拝啓、ちばあきお先生」と変更し、リニューアル作業を行っているところです。それに伴い、HNも”記憶”と短くしました。また小説の最新話も明日アップする予定ですので、よろしければご覧下さい。
https://stand16.hatenablog.com/
今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
記憶様。
ご無沙汰しております!
こちらこそ「続・プレイボール」と「続・キャプテン」繰り返し楽しませてもらっています。
今回のストライクゾーンの話は私には結構衝撃的でしたが、現実としてあると知ると、また甲子園の試合見る目も変わってくるなぁなんて思っています。
ブログ名とHNの変更確認させていただきました。
リニューアル作業は大変かと思いますがご無理なさらないよう、私の周囲でも体調崩す人増えているのでお気をつけ下さい。
最新話公開楽しみに待っています!
今後ともよろしくお願いいたします。
現実に都立校が夏に出場したのが1980年の国立高校含めて4校で全て1回戦敗退らしいです。
都立校初出場、初勝利。
おまけに監督は予備校生。
今なら墨ニ時代から掘り起こされて、
バズってますね(^^)
そういう時代だったと知ると、この時代においての墨谷の活躍は今なら間違いなくブーム起こりそうですね~。
普段高校野球見ない層からも注目浴びそうw
第97話「ハリーアップ」を最後まで読んでいました
1回戦突破より第4試合の恐怖という意味があっても私は納得しました
それは初耳でしたね(^-^)
そういう意味での第4試合の恐怖って事だったんですね~。
大山ナインにはちょっと気の毒だった気もするけど、条件は同じだったわけだし、やはり墨谷の強さが光りました!
こんにちは
もう少し試合もつれると思ってましたが、あっさり終わってしまいましたね
次回はいろんな高校が登場すると思うので、楽しみです
もちろん2回戦の相手の高校はすごく気になります
どんな選手が登場するか、ワクワクします
清貧一郎さん、こんにちは!
もうひと波乱あるかなぁと思っていたので、ラストは少し呆気なさを感じさせるラストでしたね~。
初っ端から(監督の)クセがある学校来たので、次回登場する他校もそれに負けない色があるのかなと期待していますw
今回の話見ていたんですけれど
甲子園の審判の急かしは有名ですけれど、ここまでひどいのはそうそうないですよ
きわどい判定をアウトにしたり、攻守交代を早くするよう言ったり、タイムを認めなかったりする事は有名ですけれど
早く終わらせるために途中からあからさまにストライクゾーンを広くするなんて考えられない
そんなことをしたら試合がぶち壊れるに決まっています
ましてや得点差がついた状況でやるなんてありえないです
ナイターが嫌だからと言う理由で途中からこんなことをしていたら
全国中継されている放送なんですから非難轟々間違いなしです
プロと違って甲子園の審判はボランティアである事と、シビアに考えていないことからストライクゾーンを広めに取る事はありますけれど、ここまであからさまにやってくることは普通ではあり得ませんね
1打席2打席でも問題になるのに3イニングまるまるやってこれを甲子園とは言わないでほしいですね
1回戦は幻滅しました、2回戦はまともにやってほしいですね
そういえばもう勝たなくていいと言っていた校長この結果を見てどう思うんでしょうかね
ここまでではないけど実際に今回のような事は有名なんですね……。
詳しくない私には結構衝撃かも。
マンガでは少しオーバーに描かれている感じなんでしょうか。
あそこまでわかりやすいと両チームからは抗議でなくてもテレビの視聴者から指摘されそうですよね。
そういえば校長あんなこと言ってたし今回の勝利をどう見てるのか気になりますw
すごい批判的に描いていましたけれど
私個人としては審判の急かしについては否定的ではないんですよね
CMのないNHKでやっている都合もありますし、ダラダラやっているようにしていると全国の高校野球を夢見る球児たちに悪影響になってしまいますから…
審判はボランティアでやってますし、興行としてうまくいかなければバスケとかみたいに球場を開ける必要がありますから
仕方ないと言うところです
それでも今回のように高校球児の夢が大人の都合で破壊する表現だけは勘弁してほしいですね
なるほど。
運営側からの事情を考えるとしょうがないって部分もあるって感じですかね~。
選手たちには思う存分戦って欲しいっていうのもあるし難しいとこですねぇ……。
墨谷はビッグイニングの大量得点で逆転後はあっさりと試合進んで勝っちゃいましたねw
大山高校は基本はゴロ狙いでランナー2塁まで進めば約束反故でサイン送って球種絞るという戦法を見て、
谷口はこれで相手チームの㡳が見えてた感じで負けないだろうと踏み余裕の采配に見えました。
相手チームには悪いけど初甲子園の墨谷にとってはいい肩慣らしで試合慣れできた内容でしたね。
あとかつてドカベンでもありましたが、野球漫画ってわりと運営側や審判団をやや辛辣に描くとこありますねw
もうひと波乱あるかも? なんて心配したのですが結局そのままでしたね~w
確かにサイン送りの件からその後の対応まで、この試合は谷口が焦りも迷いもなく采配していたのが印象的でした。
今回のような描かれ方は読者視点だとどうしても審判や係員はちょっと……って思ってしまいますねぇw
こんにちは。いつもありがとうございます。
1回戦突破ですが、第4試合ネタとかはもうこれ以上ないことを願いたいですね。自分はもっと野球そのものを描いた熱戦を見たいのですが、どうも以前からやり過ぎなトリックプレーだの、そういった首を捻る展開が多くて。
と、苦言を言いつつも今の作者には感謝感激ではあります。今さらながらまさか40年以上経った現在にその後の谷口、墨高メンバーが見れるとは夢にも思っていなかったですから。
こちらこそコメントありがとうございます!
こういう急かされる事も含めての甲子園の野球という事なんでしょうけど、私もここから大山がどんな粘りを見せるのか見てみたかったです。
最後は呆気なかったなぁと……。
ほんとまさか今の時代にキャプテン・プレイボールの続きが読めるとは思っていなかったので、その点についてはありがたいですよね~。
次回旅館などで倉部監督と会話するシーンなんかも描かれるとは思いますが、タバコ吸っている場面や審判、高野連などの少々高圧的な大人の態度など、昭和の雰囲気はきっちり描かれているとは思います。自分は当時中学生でサッカーしてましたが先輩、顧問(体育教師)今なら大問題だろという奴ばかりでしたw
顧問は常に竹刀持っていたし、先輩は昔の丸井みたいな暴力的なのも何人か居ましたね〜
2回戦は野球そのものにこだわった熱戦期待します。
やはりあの頃はそういう時代だったんですねw
当時が自由すぎたのか今が窮屈すぎるのか……。
二回戦まずはどんなチームが来るのか注目ですね~。
こんにちは。いつも楽しみにしています。
照明代がかさむのでハリーアップ、わかるんですが、野球のおもしろさの1つである間の取りあいがなくなるような気がします。また?きわどいとはいえボールをストライクにするってほんとにやっていたのでしょうか。いくら79年当時といってもやり過ぎではと思ってしまいます。
今回は疑問が残りましたが、早く墨高の2回戦を見たいです。次はどんなドラマが待ってるか楽しみです。
こちらこそありがとうございます!
実際どうなんでしょうね……?
79年となると私はまだスポーツを理解もできない年齢だったので当時の事情は知らないですが、本当にこういうのはあったのかなぁ。
2回戦の相手も次回でわかりそうですね~。
今度はどんなチームが相手なのか楽しみです!
こんにちは。
4年前はキャプテンをジャンケンで決めていた弱小墨谷が甲子園1回戦突破!夢のようですね。
墨谷二中は多分イガラシの弟がキャプテンなのかな?後輩たちも誇りに思ってるでしょうね。その辺りの描写も見てみたいですね。
こんにちは、けんさん!
読者視点だと遠い過去に感じたけど田所さんたちがジャンケンでキャプテン決めたのって4年前なんですねw
確かにあの墨高が自分達の先輩によって甲子園初出場で一回戦突破したって嬉しいでしょうからね~。
彼らの反応見てみたいです!
なるほど、「もう一つの第4試合の恐怖」って、そういう意味でしたか。
審判が、心理的に時間に押されて、判定が投手有利になるという。
1979年当時じゃ、経験者でなければ知り得ないことですね。
さて次回、ようやく他のチームが登場のようですが……。
こういう事情って知りませんでした……。
倉部監督はわかっていたみたいだけど大山の選手たちはちょっと気の毒な感じにも見えました。
次回はいよいよ二回戦の相手もわかりそうですね~。
どういうチームが出てくるのか楽しみです!
「けん」さんが言っていることに関係しますが、考えてみれば、他チームが知らないのは変だし、報道されないのも変なんですよね。
「墨谷高校の谷口監督が、墨谷二中の野球部を全国レベルに押し上げた、伝説の名キャプテンであること」、「現墨谷高校の選手の多くが、谷口監督を慕ってやって来た、墨谷二中の主力選手であること」を。
ここまで話題性抜群な監督とチームもうないでしょうしね~。
話題性大きいだけにもっと取り上げられてもいいとは思うのですが確かに変ですねぇ……。
谷口が、強豪・墨谷二中の基礎を築いたのは、作中ではまだ4年前です。忘れられてるはずもありませんしね……。
プレイボール2の頃から散見されますが、コージィ城倉の野球感においては
軟式野球での名声というのは硬式野球界ではさほどでもないようです。
かつて大阪から遠征の浪国との練習試合では、イガラシが全国優勝チームのピッチャーだとわかっても
「ふ~ん案外名選手がおるもんやな」とか「キレの良い球投げるじゃないの」と余裕の対応でしたしね。