第33話「たどり着いたらいつも雨降りの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
日も暮れた練習試合の帰り道。
谷口は自転車を漕ぎながら考える。
南砂や清澄とはもはや竹バットで戦っても勝ってしまう。
それなら紅白戦でもやっていた方がマシだと。
そして土曜日は紅白戦をする事に決めたが、日曜日は妥協せずにいい相手を捜さなければいけない。
(待ってるだけじゃオイシー話は転がり込んでこないぞ)
別の日。
松川と近藤はこの日も皇居までの往復20キロロードをこなしていた。
中学時代もいっぱい走らされたけど高校野球部はそれの比ではないと思う近藤。
折り返し地点の皇居前で寝転がって息を整える近藤を松川がみっともないから寝るなと注意する。
だが、ヒーヒー言いつつもしっかりついてくる近藤にやはり馬力はあると認めつつ、
「あとは根性だ」
「おめぇはとびぬけた素質を持っているがゆえに…同学年の中にライバルがいない!」
「そういう者がいないおめぇは少しだけ不幸かもしれない」
と言う。
去年1年坊だったイガラシと井口はいいライバル関係だったと話し、実力はあってもすぐには高校の硬式でそれを発揮できるわけではなく、慣れるのにはどんな奴でも時間がかかる。
イガラシと井口は同じジレンマを抱えながら、
「おれの方が先に周りに認められたい」
とバチバチやっていたのを、同じピッチャーだから松川にはそれが伝わってきたのだという。
そしてそういう関係が”根性”を鍛えるのだと。
「いっそのこと、おれとライバル関係になるか?」
と言い出す松川に近藤は、
「え~~!? ムリムリムリムリ! やめて下さいよ~~!」
と精一杯拒否するのだった。
土曜日の紅白戦。
白組先発は近藤。
紅組先発は松川と、本当に2人の対戦となった事に笑う松川だが当然負けるつもりはない。
この2人を投げ合わせたらどうなるのかと、谷口はアンパイアとして見守る。
だが、結局日曜日の試合相手は見つからなかったようで、明日日曜日もイガラシと井口の先発で紅白戦を行うらしい。
試合は6回表を終わって2対1と紅組が1点リード。
ここまで2失点に抑えていることに
(近藤…がんばってるな)
と評価する谷口。
松川も近藤のピッチングを評価しながらも3年生として負けられないと気を引き締める。
一方の近藤は紅白戦のおかげでロードが休みのことが嬉しくてしょうがない様子。
そこへ部長が慌てて駆け寄って来て、明日静岡に行けるかという。
ダメ元で静岡の静岡工業に電話をしたら、明日日曜日に空きができたらしく、来てくれたら練習試合をやってもいいと言われたらしい。
静岡工業はセンバツにも出た強豪。
「行きます! 静岡なら始発で行けば試合やって帰ってこれる!」
と即答する谷口だが問題は旅費だった。
部長が計算したところ、往復で1人4000円近くかかるらしく、部費ではまかなえないらしい。
どうするか悩んだ谷口は試合を中断してみんなを集める。
事情を説明し、旅費の片道約2000円を自費にしてもらいたいと話す。
部員たちからはそれぞれ
「いや、大丈夫だと思いますけど…」
「ちょっと帰って親に聞いてみないと……」
との声が出たので、紅白戦はここで打ち切り、今すぐ帰って親に聞き、無理な者は連絡し、行ける者は始発30分前に学校集合と通達して解散する。
日曜日。
静岡へ向かう電車の中。
全員揃った事にほっとする谷口だが、電車の中はすごい混みようで目的地までずっと立ったままになる気配。
「うう~燃えてきたぜ」
「頼みますよキャプテン」
拳を握りしめて言葉通り燃えている丸井に声をかけるイガラシ。
「頼むのはおめぇの方だ! 先発・イガラシ。そしてキャッチャーは井口!」
それぞれがやる気を漲らせるが、途中から外は雨が降り始める。
練習試合ができるのか心配する墨谷ナイン。
同じ頃、同じく雨が降る中を群馬遠征に向かうお花茶屋高校もマイクロバスの中から練習試合の心配をしていた。
静岡工業グラウンドに到着した後も雨は止まず、静岡工業監督から
「ちょっとこれはキツイですなァ……。せっかくはるばる来てもらいましたが…」
と試合中止を言い渡されそうになるも、小やみになってきてるしもうちょっと待ってもらえないかと頼む谷口。
すると群馬でも静岡でも雨がやみ、静岡工業ナインが水抜き作業を始める。
手伝おうとするも人がいっぱい入ると余計荒れるからとやんわり拒否され、ベンチでその様子を見守る墨谷ナイン。
谷口はグラウンド状態を手で確認し、湿ってはいるがこれくらいならできそうだと思った矢先、再び雨が降り始めた。
結局練習試合はできないまま帰りの電車も満員の中立ちっぱなし状態。
谷口は部費だけでなくみんなに自腹まで切らせて収穫がなかった事に落胆していた。
そして遠出にはリスクがともなうから、やはり都内でいい相手を見つけて回していくしかないのだと。
一方、群馬にいたお花茶屋高校も雨の中マイクロバスを走らせていたが、練習試合中は晴れていたらしく、強豪の前橋実業2軍に勝利。
「収穫アリ!」
と盛り上がっていた。
学校に戻った谷口はサッカー部員から東京はずっと晴れていたと聞かされ、
(こんなことなら東京でみっちり紅白戦やってりゃ良かった!)
と、がっくり肩を落とす。
その姿を見た丸井が背後から、
「こんな日もありますよ谷口さん! 元気出して行きましょー!」
と大声で声をかけたものだから、思わずビクっとなる谷口。
「それが人生ってもんじゃないですか」
と続ける丸井。
ここで第33話が終了となります。
思い通りに回っていかない墨谷と何をやっても上手く回るお花茶屋。
2軍相手とは言え強豪校相手についに勝利したお花茶屋に対して、やっと見つかった強豪相手にお金と時間をかけて得られるものがなかった墨谷。
谷口のショックが伝わってくるようですが、こういう時だからこそ丸井の励ましは嬉しいですね。
紅白戦ではあるものの、松川相手に投げ合った近藤も20キロロードの成果が出てきている感じでしょうか。
最初は松川も冗談で言ったライバル関係がそのまま本当のことになりそうな予感です。
次回は久しぶりにリカとサチ子が登場するようですが、
「予期せぬ提案」
とは2人からなのか。
それとも別の事なのか。
そちらも気になるところです。
・第29話「監督に意見する2年坊の巻」
・第30話「ベースランニングのうまさの巻」
・第31話「変わりばえのしない勝利の巻」
・第32話「松川の併走者の巻」
・第33話「たどり着いたらいつも雨降りの巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
お花茶屋対戦の前橋実業?あれは名門前橋工業をモデルかな?静岡工業はかつて実在してたね。統合して学校名かわったけど。
>>静岡の静岡工業に電話をしたら、明日日曜日に空きができたらしく、来てくれたら練習試合をやってもいいと言われたらしい。
これってさあ空きができたってことは、どっかの学校が練習試合辞退したってこと?まさか天気予報で雨を予測してじゃないよね?
しかしせっかく強豪校との対戦で墨谷のレベルがわかるとこだったのに雨で中止って、一体作者は何をいいたかったわけなの?お花茶屋は計画通りに進んでるようだけど、いづれ墨谷を脅かす存在にでもなるの?しかし夏の大会までには時間なさすぎでしょ。ただこの作者は予想外の展開を描きますからね。昨年度の夏の予選と秋の大会がまさにそれですよ。逆にそれも楽しみですが。今年こそは甲子園出場と読者は誰しも予想してるでしょうが、ヘタすりゃそれも覆えったりしてね。(笑)
そういえば今回の静岡工業との練習試合が行われていれば、現在の墨谷の実力がどれほどなのかわかるとこだったんですねぇ。
そういう意味でも雨天中止は残念でした。
今のお花茶屋の描かれ方を見てると、墨谷の強力なライバルにするためなのかなとは感じます。
異なる環境と練習の両チームがぶつかってどうなるのか。
まさかここで墨谷が負けるとは思いたくはないですが……。
でもごんたさんがおっしゃるように甲子園出場は私も期待というか今回は行くだろうと思っているけど、大どんでん返しもありうるのかなw
ヒィヒィ言いながらもしっかり継続できる近藤はほんとうに精神面で打たれ強くなりましたよね。しかし文句言うこと自体を松川に断罪されましたけど(オメェとか言わないイメージあったけど倉橋っぽくなったなって思いました)
きっと、「文句言ったら井口に言いつけるぞ?」ってカマかけられてるのかなと勝手に思いました笑
少なくとも近藤達は中学時代からの習慣もあってお昼休みや家に帰ってから進んで勉強してそうですね
せっかく収穫になる試合と思ったのに残念でしたね…
言問や京成、専修館、軟式だけど朝日はどうでしょうか?
近藤ってきつい練習に弱音は吐いてもちゃんとやり遂げるんですよねぇ。
そのあたりはさすがだなぁと思います。
でも松川のオメェ呼びは言われてみると倉橋っぽいですねw
松川はもっと普通の悪く言えば個性ないキャラに思っていましたけど、こういうとこ見るとやっぱり最年長なんだなと思いました。
始発で自腹切って遠征して収穫なしは精神的に堪えるでしょうね~……。
専修館は今どうなっているのかも気になるし、申し込めば受けてくれないかなと思うんですけどどうなのかな?
朝日高校も丸井経由ならやってくれそうですよね。