第85話「甲子園の土の巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!
宿の前で大山高校野球部とバッタリ。
「浪人生監督の谷口クンですか?」
大山高校野球部監督の倉部の問いかけに谷口が答えると、大山高の選手達が
「チェイ~~~ス!」
と大きな声で挨拶。
墨高野球部はその迫力に圧されてしまう。
倉部監督は新聞で谷口の事を知っていたそうで、同じ宿だって事で驚いたという。
大山高選手達の強面に
(しかし怖そうなお兄さん達…)
と感じていた墨高選手達だったが……。
花札、ポーカー、ブラックジャックにカード麻雀など、両校選手同士が部屋で一緒になって楽しそうに遊んでいる。
その様子を見た谷口と倉部は谷口の部屋に戻り、谷口が勉強中の参考書を見た倉部から、
「甲子園の土ってどこの土でしょう」
と問題が出される。
鳥取砂丘と答える谷口に、
「惜しい。正解は同じ鳥取県でも大山の土」
と教える倉部。
色々な土をブレンドしてあるから純粋というわけではないと言い、大山高は大山の麓にあるから裏山に行けば甲子園の土がぼこぼこ落ちている。
だからセンバツで出場した時も甲子園の土は持ち帰らなかったという。
「夏も来るぞ」
と根性入れたら本当に来れたと。
鳥取大会の参加校は25校と少ないため、鳥取だったら甲子園に行きやすいと思い、県外から実力ある選手が強い高校へ越境入学してくるのだとか。
だが、大山高は全員県内出身者らしく、東京代表にしては珍しい都立で近所の子達だけでやっている墨高にはシンパシーが沸くのだとか。
東東京は鳥取の10倍位参加校があるらしいが…とし、
「その頂点に立ったのが浪人生監督。アナタまわりから恨まれてませんか?」
と言う倉部。
谷口は19歳で倉部は38歳。
東京の監督達だってみんなオジサンで、19歳の若者が全オジンをやっつけた。
特に私立などは立つ瀬がないだろうと。
だが倉部は
「アナタは特別な人だと思う」
「無責任な事言って悪いですが、アナタは受験もモノにすると思いますよ」
と話す。
曲がりなりにも教師である倉部から見た谷口はバカではない。
「アナタの未来はキラキラしている。田舎の教師から見たらまぶしすぎる」
「腰かけでやってる監督が甲子園に来れてしまった――と!」
その言葉にドキっとする谷口。
倉部は墨高と同宿だとわかった時、イヤミの一つでも言ってやろうと思っていたらしい。
「でもアナタは好感の持てる純朴そうな青年に見える」
「アナタは自分の凄いとこを鼻にかける人間に見えない。こりゃ肩すかしですよ~」
と言い、谷口へのアドバイスとして
「甲子園に初めて来た人達はね……まずは甲子園の迫力にやられますから」
と語った。
甲子園練習日。
「墨谷高校ーーーコッチ来てー!」
「早くするーー! かけ足!」
係員の声に圧倒されながら、指示に従って甲子園のグラウンドへと入った墨高選手達は、そのでかさに驚く。
「おい。見とれとるヒマはないぞ。早く荷物を降ろして練習しろ!」
「練習28分。整地2分。合計30分!時間厳守!」
「もたもたしない!」
係員に怒鳴られながら急いでバッティング練習を始めると、
「はぁ? いきなりバッティング練習?」
と、ここでも係員が口を出してくる。
普通のチームは守備練習するらしく、球場の質感やファールグラウンドの広さ、クッションボールのはね方とか試さなくていいのかと言う。
部長が慌てて出て来て、ノックに切り替えると話す。
「アンタが部長さんですか。まぁそうしといた方がいいんじゃないの」
(初出場のチームはなんもわかっとらん)
と思いながら背を向ける係員だが、今度は谷口が出てきて部長にバッティング練習でいいと伝える。
「それに打ってない者は守りに付いてるんで…守備練習にもなります」
そう話す谷口だが、
(これが有名なコゾー監督か…!)
係員の厳しい目つき。
「ゴロの転がり方……神宮とは違うよ…」
「だから……守備には付いてますし…」
そして沈黙。
谷口は倉部の話を思い出す。
甲子園に来ると建物の迫力に気圧されるが、人の迫力ってものもあり、それは高野連のオジサン達の迫力だと言う。
彼らは歴戦の甲子園監督や部長達で、一人一人は気さくでとってもいい人だが、49もの代表校を円滑に捌くことが求められるから多少高圧的になり、それが初めて甲子園に来た人間にとっては結構怖いのだとか。
「だから選手達に言っときなさい。オジサン達の言うことは顔を立ててある程度は聞いとくが、それでも絶対マイペースは貫き通すこと」
今、その迫力を前にした谷口は
(さすが経験者。あの監督の言ってることは一理あるかも)
と感じていた。
「甲子園って新参者は伸び伸びとできないしきたりになってるようでね。でも絶対負けちゃいけない! 死んでも伸び伸びとやるんです! そのためには気持ちを強く持つこと!」
倉部の言葉通り、墨高選手たちは予定通りの練習を終える。
続いて大山高校の練習が開始。
「さぁ帰ってきたぜ甲子園!」
倉部の声と共に選手達が挨拶すると、
「よっしゃあーまずは甲子園の土に感謝!」
再び倉部の声が響く。
選手たちはその場に正座すると甲子園の土を顔にすりつけ、大山の土だと声をあげた。
「そう! この土がおれ達の味方をしてくれる!」
そんな彼らに係員の怒声が響くが、全員まるで気にする様子もなく練習を開始。
ここで第85話が終了となります。
強面揃いの大山高校野球部だけど監督も選手たちもいい人そうですね。
選手たちは一緒に楽しく遊んでいたし、倉部監督も顔合わせる前はイヤミ言うつもりだったようですが、実際に谷口の人柄を見て色々アドバイスもくれたみたいで、思えば谷口って墨谷二中に転校して以降は周囲の人間にも恵まれてるなって感じました。
次回は抽選会やるようで、いよいよ出場校や一回戦の相手がわかるみたいです。
楽しみです。
・第81話「究極の指示の巻」
・第82話「谷口の選択の巻」
・第83話「背番号を返してくれの巻」
・第84話「甲子園を見に行こうの巻」
・第85話「甲子園の土の巻」
・「キャプテン2/プレイボール2」感想ページ
・「キャプテン」連載開始50周年記念特集ページ
・キャプテン2(13)
・キャプテン(1)
・プレイボール2(1)
・プレイボール(1)
同宿の大山高校との交流や墨谷練習で甲子園球場入りと、個人的には試合以外のこういう日常や練習シーンは大好きなので今回は良かったですね。
大山の監督は谷口に色々とアドバイスしてくれてたけど、コレ見てると何かちばてつや先生のあした天気になあれで、向太陽がプロ入り後の初出場の大会での練習ラウンドを、前年度優勝選手とコース回り色々とアドバイスしてもらってたシーンとダブった。大山の監督の顔ってちばてつや系のキャラですよね。
ここ二話は日常が描かれていたので落ち着いて読めた感じがしました。
墨谷の選手たちが甲子園に来ているってのもなんだか新鮮でもありましたね~。
確かに倉部監督ってちばてつや先生キャラに近いですね(笑)
一つ言い忘れていました。
東京大会の参加校数ですが、東東京だけでは250校はいきません。
西東京も会わせると、1979年でもそれくらいいくはずですが。
なるほど。
東東京と西東京合わせてですか……。
倉部監督がそのあたり詳しくは認識してないって感じなのかな?
細かい事ですが、
金属バットが解禁されたのが1974年の第56回大会。
1府県1代表になったのが1978年の第60回大会。
漫画上では金属バット解禁2〜3年とすると、
まだ、鳥取県代表というのは存在してなくて、
東中国代表とか山陰代表の時代なんですよね…
あら。
そのあたりの事情が物語の中ではどうなっているんですかね……。
プレイボール2の連載開始時に時代設定を1978年だと作者のコージィ城倉さんが明言しているので、キャプテン2の谷口監督編は翌年1979年の設定になるからこの辺は間違ってないかと。
いつも読ませてもらってます。
大山高校の監督、意外とまともそうな人ですね。
甲子園練習ですが、係員ってあんなに威圧的なんでしょうか? 今でもああなんなんですかね、ちょっと嫌な感じですね。
今回は大きな進展はなかったですね。次回は抽選会、開会式へと続き、墨高の戦い、いよいよはじまります‼
コメントありがとうございます!
見た目や練習風景からどんな暴れん坊かと思ったら、喋った感じはちゃんと教師でしたね(笑)
次回の抽選会は出場校や対戦相手がいよいよわかるので楽しみですね~。
今回の係員の言動はそんなに悪くなさそうに見えましたね
普通だったら30分しかない練習でバッティングのみなんてあり得ませんよ
せっかく貴重なグラウンドを貸し与えているのにどんなグラウンドでもできる打撃練習で終わらせるなんてあり得ませんよ
言い方は悪いかもしれませんが
とりあえず私だったら
「本気でそれでいいの?
全国放送で恥かくよ?」と思うことは間違いないですね
谷口たちは修学旅行気分が抜けていませんね
そんなチームが甲子園に来ることなんて普通想定できませんよ
倉部監督が言ってたとおりに時間通りに学生たちを捌かないといけないからああいう言い方になってしまうのかなぁ。
なんとなく車の教習所の教官思い出しました(笑)
前回から気になってましたが
地元では、
『そいやさー』とか『どりゃさー』とか言いませんし、『チェイース』なんてありえません。
あまり変な描画だと読者や他県の皆さんが勘違いします。
知らないので完全にそういう言葉があるものだと思ってました(笑)
確かに知らないと勘違いしてしまいますね、これ……。
ありがとうございます。 大山高校の紹介、なんかもう一つの回かなあ。 ちば先生ならどんなふうに描いたんだろう。 近藤や井口らが甲子園と出場チームの迫力に上気して、いろいろと騒いで、丸井が怒って谷口にたしなめられて、いけねっと舌を出す。 父ちゃん、母ちゃん、田所さんやOB達が沢山、宿舎に顔を出して激励。 その夜、いろいろな思いを胸にやるぞっと気合川入る谷口ら、墨谷高校の面々。 というところで良いのでは無いでしょうか。
ちばあきお先生だったら……というのは色んな話で考えちゃいますねぇ。
懐かしい面々の再登場も含めてOBたちの激励は見てみたいなぁ。
大山高校の監督、少なくとも言うことはまともでしたね。
それに、キャプテン2の世界でも、東京大会は東西に分かれていたようです。
でも、この年から分かれて、そのせいで予選の試合数が減ったわけではないでしょう。
現実では、1974年からそうだったはずですから。
もっととんでもない人なのかと思っていたけど会話はまともでした(笑)
見た目でもうちょっと年齢いってるかと思っていたので38歳というのも驚きました……。
SNSもある現代では、あの係員みたいな態度してたら大変な事になるよ。
ただ円滑に業務を遂行する為に多少キツイ物言いになるだけならまだしも、練習のやり方にケチをつけたり「コゾー監督」などと個人的な私情感情が入るようではね。
今の時代だったら色々言われるかなぁ。
あの当時の監督や選手も委縮する恐れがあるくらいの迫力となると相当きついんでしょうねぇ……。
ごもっとも。
「コゾー監督」の方は口に出さなかったからいいとしても、練習内容にまで口を挟むのは明らかに越権行為。
現代なら、問題視されて制裁食らっても文句言えませんね。