第98話「客観的に考えればの巻」の感想です。
ネタバレ含むのでご注意!


大山高校との試合を8対2で勝利した墨谷。
(勝った)
谷口、半田、部長。
そしてスタンドで応援していたみんなが勝利を実感。
「おれ達の後輩すげぇ~~~!」
喜ぶ田所と倉橋だが、倉橋はそのまま駆け足で新幹線に飛び乗る。
「これは夢じゃないんだ! 甲子園1勝!」
「谷口監督すげえよ!」

新幹線内でも興奮冷めやらない様子で駅弁を食らう倉橋。
同じ車両に乗っていたリカとサチ子も谷口の凄さにあらためて驚きながら、
(な、なんて人なの…)
(結婚したい)

なんて思いながら、2回戦の応援にまた大阪まで来るかどうするか悩んでいた。
そして応援団が乗ったバスの中では祝杯を挙げる田所さんと、
(もう一回甲子園に来なきゃならなくなった)
(またまた寄付集めなくちゃ)

と心配する校長の姿があった。

試合後。
その日のうちに宿を引き上げる大山高校を見つめる墨谷の選手たち。
「まぁ公立校は大変なんだよ。宿泊費とか」
と話す鈴木と、
「それもあるけどあしたからもう練習するんじゃないですか」
と話すイガラシ。
そこへ谷口が(大山の)1・2年はグラウンド12時集合だと話すと、イガラシたちは驚きの声をあげる。
「あの監督ならさもありなん――だよ。もっとも甲子園に出てくるとこはみんなそうらしいよ」
と続ける谷口。
もう全国の99%以上の高校は新チームになって”秋”が始まっており、甲子園に出てるチームはある意味出遅れている。
「ウチがもし負けてたらもう一泊して2日くらいは完全休養にしていた」
「厳しいな……。甲子園に出てくるとこはみんな厳しい。ウチはホント”都会の田舎チーム”だよ」

と話す谷口だが、倉部監督からは本当に色々なことを教わったとも言い、
「おれは今まで自分のこと負けず嫌いだと思っていたが…全然”全国レベル”じゃなかった」
と言う。
「じゃあ2回戦も負けず嫌いで行きますか」
という丸井だが、谷口は勝つと気持ちいいし何より楽しいとしながらも、ウチなんかに”甲子園”が2勝もさせてくれるか? と疑問を口にする。
もし墨谷が2勝してしまったらある意味”甲子園のレベル”が疑われてしまうとも。
「たしかに。甲子園は厳しいですもんねぇ」
と同調する丸井だが、そこに異を唱えたのは半田だった。
「僕は思うんです……。甲子園に来てるとこは本当にいろんなとこがあると…」
甲子園に出場する学校全てが画一的に巨大なモンスターみたいなものではない。
例えば全国3千何百校の上から強い順に並べろと言われたら、関西地方や広島・四国・九州方面が名を連ねると思うが、甲子園は各県一校という縛りで来ている。
まぐれで来ているとこはさすがにないと思うが、色々な人達が来ている事には間違いない。
つまり「何が起こるかわからない」という要素はいついかなる時もついてまわり、墨谷が2回勝つ事もけっして”事件”ではないと思うと。
その考えにイガラシも
「僕もそうだと思います。だから甲子園大会は面白いし全国の野球ファンが熱狂する。勝利の女神が弱い方に味方する時だってある」
と話す。
「はは…客観的に考えればそういう見方もあるが…。おれ達はプレーヤーだからな」
そう答える谷口。

2回戦の相手は長野の私立の名門校・信州学園。
選抜含めて甲子園出場36回と参加校の中では最多であり、初出場の墨谷と比べたら天と地。
全国的に見ても”古豪”と言っていいと話す半田。
「古豪とか名門校とか……そういう人達の感覚ってどうなんだろうね? 新参者には想像もつかない」
と尋ねる島田に半田は
「伝統というものは大きいと思いますよ」
と答える。
やってる人は現代の人達でも有形・無形の力が付与される。
それは伝統校の持つ環境。
そこから育まれるプライドだと言う。
プライドが高い人達は自信を持ってプレーできる。
さらに東京のチームは長野の学校と練習試合するが、半田が噂で聞いた範囲でも信州学園はかなり強いらしい。
「プライドが高い人は強い…――か」
呟く鈴木。
その隣でイガラシを見ながら
(コイツはプライド高そうだけどな…)
と思う丸井。
ところが信州学園の甲子園での勝率は高くなく、選抜含めて甲子園10回連続初戦負けしているらしい。
半田は組み合わせが決まった瞬間に2回戦信州学園だとわかっていたので、その日のうちに長野の地方紙もルートを使って発注し、明日あたり届くという。
(古豪で名門校で実力はあるが甲子園には弱い――か。たしかに甲子園には色々なチームがあるのかもな)
みんなが話す中、谷口は外を見ながらそう思うのだった。

翌日。
東京の下町は墨谷の1回戦突破に大盛り上がりで、その様子は部長を通じて谷口にも知らされる。
谷口は少し戸惑った様子で
「大山高校の倉部監督が1勝にこだわった気持ちも少しわかりますねェ」
と話す。
だが、そんな中で校長は少なくとも4泊は余分にしなければいけなくなり寄付集めに大変な様子。
そんな中、田所電機商会では田所の父親が校長に持って行けと寄付金を田所に渡す。
その額に驚く田所だが父親は、
「男たるもの稗や粟を食ったとしても応援しなくちゃならねぇ時がある」
「な~に心配するねぇ。これからは電気屋が儲かる時代よ! ビデオデッキがどんどん売れてくからなぁ」
「これからは録画の時代! ベータとVHSが稼いでくれるさ!」

と男気を見せるのだった。
予備校前では小学館予備校の女子2人に呼び止められるリカとサチ子の姿。
「墨谷の2回戦は……甲子園行くの?」
と尋ねる女子2人に行くと答えるリカとサチ子。
「ま、また新幹線で行くわけ?」
「う、うん」
「ちょっとどんだけ金持ちなの? 米屋と肉屋の娘って…」
「大学落ちるわよ!」

なんて会話を終え、逃げるように去っていくリカとサチ子。
「あ~ん」
(結婚したい)

と考える応援に行けない小学館予備校女子2人。

2回戦当日。
墨谷が先攻のこの試合。
信州学園は
ピッチャー住友
キャッチャー安楽
ファースト寺田
セカンド森下
サード春日井
ショート牧
レフト伊藤
センター宮下
ライト山脇
という守備陣。
信州高校の監督はベンチで腕組みしたままどこか表情が硬い。
「信州学園は初戦! ウチは2戦め。そのアドバンテージはあるかもな」
と話す谷口。
「そしてどことなく信州学園の監督の顔は硬い…。甲子園で勝てないジンクスを気にしているのか?」
と話す半田。
そして今回も第4試合。
「第4試合のやり方はわかった」
現在の時刻は5時。
「さぁ先制点! どんどん打って打って取れるだけ取る!」
谷口が選手達に告げる。

ここで第98話が終了となります。

感想

1回戦突破に盛り上がる周囲とあくまで冷静な墨谷野球部。
特に選手達からは調子に乗るわけでも弱気になるわけでもなく、あくまでマイペースな感じが伝わって来ました。

そして2回戦の相手は信州学園。
今大会参加校の中では最多の甲子園出場数を誇る古豪らしいですが、選抜含めて10回連続初戦負けしているせいか、監督の表情から余裕は感じられませんね。
1回戦で第4試合の戦い方含めて色々学んだ墨谷が一気に攻めるかどうか。

次回は
ストライクゾーンが広くなる前に打つ!
『県民の想い』

今度は案外早く勝負つくのかな?

関連リンク

・第94話「上級生のプレッシャーを背負ってくれたの巻」
・第95話「目が慣れる頃の巻」
・第96話「部長の功績?の巻」
・第97話「ハリーアップの巻」
・第98話「客観的に考えればの巻」
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22 Thoughts on “「キャプテン2」第98話感想

  1. 今更ながら大山高校が公立だった事にビックリ。
    ちょうど漫画で描かれる時期に関西方面からの野球留学を受け入れる私立高校がよく甲子園出ていましたから。

    墨二もいきなり強豪なりましたが、
    全国大会の費用は問題なりませんでしたね。
    丸井キャプテン時の選抜はバス移動していたので東京近郊なんでしょが、
    イガラシと近藤の時は何処?

    まあ細かい事言ってもしょうがないので、
    甲子園での活躍を見守りたいと思います。

    蛇足ですが、
    実家が電気屋でベータ中心でビデオデッキ売っていました。
    レンタルビデオが登場する5〜6年後までは全然売れてましたよ(笑)

    • 大山高校が公立だったのは私も意外に思っちゃいました。

      確かに墨二時代は費用についての話題はなかったですね~。
      実際どうだったのかなぁ。

      でもそれ以上にSAWAさんのコメントでベータが売れていたという事に驚きましたw
      私は微妙にビデオデッキ競争の時期と世代がずれているので……。
      最初は普通にVHSとベータで競争にはなっていたんですねぇ。

  2.  ゲーム子様、いつもレビューありがとうございます。
     次は古豪・信州学園戦ですね。普通の野球漫画ですと、どうしても主人公チームを関東や関西の強豪校とばかり対戦だせてしまい、勝ち上がるにつれ、どんどん相手の強さがインフレ化しがちですが、そこはひねりを入れて面白いと思います。
     ただ個人的には、谷口君に「ウチなんかに”甲子園”が2勝もさせてくれるか?」なんて言わせて欲しくなかったですね。原作の谷口君なら、自分達の弱さは認めつつも”やってみなきゃ分からない”とし、自分や周囲を鼓舞していたはずです。まあ作者が違うので仕方ないですが……。

     なお、小説「続・プレイボール」では、いよいよ甲子園の準々決勝が始まりました。よろしければ、またご覧いただければうれしいです。

    • 記憶様こんばんは!
      こちらこそコメントありがとうございます~。

      谷口の性格や立場考えたら、あそこは思っていても弱気な部分は見せないで欲しかったという気はしますね~。

      小説「続・プレイボール」第82話読ませていただきました。
      当ブログ訪問者さんの中にも読者さんいらっしゃるし、続きも楽しみにしています!

  3. いつもありがとうございます。
    次は古豪とですか。それにまた第4試合。
    くどい展開じゃなければ良いですが。
    でも楽しみですね。
    今回存在すっかり忘れていたw鈴木がひと言ふた言話すシーンが自分は何気に微笑ましいです。前作からのキャラはやはり気になるし、例え控え選手としてもあの鈴木が(失礼w)
    甲子園に来てメンバーに入ってるのも凄いことです。もしこの先スタメンなんて展開あれば面白いですけどね〜
    あと女性陣の(結婚したい)にはウケましたw

    • こちらこそコメントありがとうございます!
      鈴木が意見述べてるの見たら、普段は一緒に入った半ちゃんと比べて目立ったシーンないせいか、なんだかほっこりしちゃいましたw
      でも女性関係はあの様子だと谷口苦労しそうw

  4. 墨谷もそこまでブランドだけ見れば偉そうなことを言えないとは思うんですけどね
    ・公立校かつ狭いグラウンド
    ・監督は予備校生
    ・OB会が発足して2年たらず
    ・三年前まで予選一回戦すら勝てないクラス
    ・春はろくに練習試合も組めない環境だった

    激戦区東京を勝ち抜いたといってもこれを知っているとどうしても運が良かっただけ扱い受けちゃいますね
    一回戦も相手が相手だっただけと考えて
    私が甲子園優勝を狙う名門校の首脳陣ならマークしないでしょうね
    逆を言えばそこが谷口二年の時のように油断している所を突く展開になるのかもしれませんが…

    ただ一番気になるのは谷原・川北をコールド勝ちしたことについて最近何も言われないのはおかしいんですよね、普通に大事件のはずなのに、
    普通だったら「谷原にコールド勝ちしたチームだ」と何度も攻撃力を警戒する描写があってもよかったはずなのにと思います
    やっぱり両校のレベルが落ちていたのでしょうか?

    • 谷原と川北にコールド勝ちのインパクトは大きいと思うんですけどね~。
      ここまでそういった話が出て来ないとこ見ると、谷原あたりは村井たちが抜けてレベル落ちたとかそういう扱いなのかなぁ。

      • もう一つ気になる事は谷口にスカウトが来ないのかということですね
        公立校の秋大会一回戦負けチームを半年で甲子園出場なんてありえないですから
        浪人生だと知ったら普通に有名私立からスカウト話がくるはずですよ

        「激戦区東京を勝ち抜き甲子園出場で一勝」「給料は月五万」なんて条件だったら破格ですから

        • そう言われるとここまではそういった描写はされてませんよねぇ。
          甲子園が落ち着いたらそんなエピソードも出て来たりするのかな?

  5. こんにちは!
    谷口モテモテですね!
    裏山〜w
    確かに丸井、イガラシ、近藤に比べたらイケメンですもんねw
    何かの別話で、谷口は谷口工務店の社長、丸井は車のセールスのかたわら墨谷二中の監督、イガラシはノンプロという物語がありました。谷口の息子は墨谷二中の野球部で丸井の元で野球を学ぶ、みたいな話です。
    ちばあきお先生の仲間が書いた漫画だっかなぁ?

    • けんさん、こんにちは!
      谷口は無難にまとまっている(というと失礼かなw)外見に中身がとんでもない能力秘めていますからねw
      モテて当然なのかも?

      そういう後日談があるという話は見た事ありますが、実際に読んだことないので興味ありますね~。
      今って読む手段あるのかなぁ……。

  6. 中ラマ on 2024年11月20日 at 12:12 PM said:

    いつも楽しみにしています。
    今回は勝った後の小休止の話でしたね。勝ってこそ思えることもある、自分達は高校球児の最高の舞台に今まさにいる、勝った日と次の日は勝利の余韻に浸かってゆっくり休んでほしいです。
    さあ、次回から2回戦、半ちゃんの調査情報が役に立つように思いますが、どうでしょうか。楽しみです。

    • こちらこそいつもありがとうございます!
      久しぶりに試合の合間の状況整理って感じのお話でした。
      ひたすら盛り上がる周囲と甲子園初勝利も冷静な墨谷野球部といった感じかなぁ。
      すでに地方紙も注文したという半ちゃん本当に頼もしいですね~。

  7. 次も組み合わせは恵まれた感はある
    是非勝ってください。
    3回戦から強豪相手かな?
    大阪、愛知、四国勢とか強そう。
    和合とか広島港南にいた選手とか出てきそうです。

    • なんとなく今回の話と信州学園の監督の表情からも、今回はあっさり勝って他校に墨谷を警戒させる事になるのかなぁとも思いました。
      港南のキャプテンとか出て来たら丸井は当時思い出して意識してしまいそうだなぁ。

  8. にしなさとる on 2024年11月20日 at 10:35 AM said:

    今回の話、一箇所大きなミスが有ります。
    甲子園の、試合の組み合わせ抽選。今のような方式になったのは1995年からのこと。
    1979年当時では、最初の抽選で決まるのは初戦の相手だけで、二戦目以降の相手は、その都度抽選していました。
    つまり、墨谷高校がこの時点で、二回戦の相手を知り得るはずがないのです。

  9. おでん on 2024年11月20日 at 9:36 AM said:

    好意的なOBがいるとはいえ、規模も組織力も強豪・名門の比じゃありませんし、予算問題、校長は本当に悩ましいでしょうねえ。
    墨谷の懐事情も心配ですが、ガッツリ寄付してベータと心中する田所電機商会も心配です。

    • ただでさえ心配性の校長だけに胃が痛いというかストレスで体調崩さないか見ていて心配になっちゃいますねぇ……。
      田所さんの父親の男気は感服したけど、次のコマのベータで私も少し心配になりましたw

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